最新記事

ロシア

大統領選でプーチンに挑む大富豪の本気度

下院選での苦戦など来年の大統領選に暗雲が立ち込めるプーチンに強力なライバルが出現

2011年12月14日(水)17時23分
ジェシカ・フィーラン

対抗馬 ロシア3位の大富豪プロホロフは、プーチンをどこまで追い込めるか Sergei Karpukhin-Reuters

 ウラジーミル・プーチン首相への挑戦は「私の人生最大の決断になるだろう」──12月12日、来年3月の大統領選への出馬を表明したロシアの大富豪ミハイル・プロホロフはこう言った。
 
 ロシアで3番目の富豪とされる実業家のプロホロフは、無所属で出馬する予定だ。自身の出馬について、プーチンやドミトリー・メドベージェフ現大統領に事前に話してはいないという。またロシアのノーボスチ通信は、プロホロフが大統領選に向けて新党の立ち上げを示唆しているアレクセイ・クドリン元財務相と組む可能性を指摘した。

 プロホロフは対抗馬を揶揄する汚い選挙戦術に走るつもりはないとしている。自分の政治的主張のうち、プーチンへの批判は10%にも満たないという。

 とはいえプーチンへの恨みがまったくないわけでもない。プロホロフは財界寄りのリベラル政党「右派活動」の党首を務めていたが、党内の分裂により今年9月に解任・追放された。彼はプーチン政権が裏で糸を引いて党員の裏切りを仕向けたと主張、政権批判を展開していた。現在もプーチン政権がロシア政界のすべて──候補者の選出からメディアへの露出度まで──をコントロールしていると非難している。

マッチョな独身貴族として人気

 モスクワ在住のグローバルポスト記者フレッド・ウィアによれば、プロホロフはロシアでは非常に有名な人物だ。


 この長身の大物実業家(身長2メートル以上)は以前から「理想の結婚相手」としてメディアをにぎわしている。YouTubeに自身のジェットスキーのアクロバット技を投稿してマッチョなアスリートぶりを見せたかと思えば、電気自動車の開発に熱心な実業家の顔も見せる。


 ロシアの産金最大手ポリュスゴールドの会長で、全米プロバスケットボール協会(NBA)のネッツのオーナーでもある彼の資産は、米経済誌フォーブスによれば180億ドルにも上る。
 
 プロホロフは、12月4日に行われた下院選で多くの国民が投票所に行かなかったのは「彼らに投票したいと思わせる候補がいなかったからだ」とブログに書いた。「国民が望む望まないにかかわらず、現時点ではプーチンだけがこの能率の悪い国家システムを操れる人物だ」

 彼はさらに大統領選への出馬のハードルはもっと下げるべきだと主張した。現状では出馬するには200万人以上の署名が必要だが、これを20万人にすることや、議会に議席を持つ政党だけでなく公共団体の代表でも候補者になれるようにするといった案を挙げている。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、極端な寒波襲来なら電力不足に陥る恐れ データセ

ビジネス

英金利、「かなり早期に」中立水準に下げるべき=ディ

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

ゼレンスキー氏が19日にトルコ訪問、ロシアとの交渉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中