最新記事

震災

プルトニウムはどこまで危険か

福島原発で検出された猛毒が大気や水道水を介して人体に害を及ぼすリスクは?

2011年3月31日(木)16時24分
ジョシュア・キーティング

見えない恐怖 福島原発で怖いのはプルトニウムではない(3月27日の反原発デモ、東京) Toru Hanai-Reuters

 日本政府は3月29日、福島第一原子力発電所内の土壌でプルトニウムが検出されたと発表した。原子炉内で幾重にも封じ込められていた燃料棒が部分的に溶け出したとみられる。

 東京電力は、検出されたプルトニウムは微量で、健康への影響はないと主張している。だが地震の発生以来、たびたび危機を過少評価してきた同社の言い分に、国民が懐疑的になるのは当然だ。ごく微量だとしても、プルトニウムは極めて危険な物質なのでは?

 確かにそうだ。ただし、福島原発がかかえる数々の問題の中では、プルトニウム検出はさほど深刻な話ではない。正確な流出量はわからないが、少なくとも原発で復旧作業に当たっている人々を除けば、プルトニウムが深刻な健康被害を及ぼす可能性は低そうだ。

 国際原子力機関(IAEA)によれば、今回検出されたプルトニウムは日本で普段観測されているのと同じレベルの値だという。数十年に渡って繰り返された核実験による放射性降下物が世界中に降り注いだため、プルトニウムは今も世界各地の土壌で検出されている。今回検出されたものが福島原発に由来すると特定できたのは、プルトニウム同位体の組み合わせが核実験時のものと異なるためだ。

 プルトニウムが恐ろしい大きな理由は、放射性を維持する期間が非常に長い点にある。福島原発で検出された同位体の1つであるプルトニウム239の場合、半減期は2万4000年だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、米株高を好感 ファストリ

ワールド

訂正ブラジル大統領、米50%関税に報復示唆 緊張緩

ワールド

英首相がトランプ氏と会談へ、月内のスコットランド訪

ワールド

米国務省、人員削減計画を近く開始 影響受ける職員に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中