最新記事

ヨーロッパ

中国人が夢中!地中海ハネムーン天国

新婚カップルの夢のハネムーン先として人気が高まる地中海。ブームに目をつけたイタリアのサルデーニャ島は直行便の就航やメディア戦略で猛烈ラブコール

2010年11月22日(月)13時57分
シルビア・マルケッティ

人気スポット 地中海に浮かぶイタリア領のサルデーニャ島は、中国で新婚カップルを追う番組の舞台にも採用された DEA-S. Montanari-De Agostini/Getty Images

 サルデーニャ島は地中海で2番目に大きい島であり、最も美しい島とも言える。イタリア領だがイタリアのほとんどの都市からはまだ直行便がない。しかし近々、上海からは直行便が出るようになるかもしれない。

 青い海に白い砂浜、野原には紫の花が咲き乱れるサルデーニャ島は、中国の金融の中心である上海の人たちにとって、世界随一の「異国情緒あふれるハネムーン天国」。中国人観光客を呼び込もうと、サルデーニャ島は上海市と共同で大規模なPRキャンペーンに乗り出した。

「中国は伸び盛りの市場だ」と、サルデーニャ北部のホテル・観光協会のジョルジョ・マチョック会長は言った。「中国の新興中間層は世界各地を旅するようになっており、『イタリアブランド』に飛び付く。いつの日か、この美しい島に何百万人もの観光客がやって来るかもしれない」

 国連世界観光機関によれば、09年の国外旅行者による支出総額は、中国が400億ドルを超えて、ドイツ、アメリカ、イギリスに次いで世界第4位となった。中国の国外旅行部門は年間20%の伸びが見込まれている。20年には中国人の国外旅行者は1億人を超えるだろう。

新婚旅行は家族や友人も一緒

 イタリアは、その中国人観光客に人気の休暇先となっている。観光収入だけが頼りのサルデーニャ島にとっては、絶好のチャンスだ。

 マチョックの夢は、サルデーニャ島を中国人カップルの主要な新婚旅行先にすること。島のホテル経営者の代表団を率いて、定期的に上海の新婚旅行の国際見本市に参加している。

 マチョックによれば、上海では毎年約15万組が挙式し、そのほとんどがハネムーン先に地中海の島を選ぶ。しかも中国の昔ながらの「集団新婚旅行」には、夫婦の親や家族や友人も参加するという「付加価値」が付く。

 中国人の新婚旅行シーズンは5月、9月、10月で、サルデーニャでは観光の閑散期だ。中国人観光客がくつろげるよう、島では巨費を投じてホテル従業員の研修を実施し、最高級リゾートの従業員が中国の言葉と文化と伝統を学んでいる。一方、中国の旅行業者はサルデーニャを旅して、島のセールスポイントを肌身で確かめた。

■結婚式のリアリティー番組で生中継

 中国とサルデーニャの協力関係が公式に始まったのは昨年10月。中国人カップルの集団結婚式を追うリアリティー番組の舞台に、サルデーニャ北部が選ばれたのだ。サルデーニャの夕焼けと広大な眺めと料理が、初めて中国のテレビで生中継された。番組は大成功、中国の1億7500万人が視聴したとみられている。

 さらにマチョックは、「中国人観光客向けのパックツアーを実施する旅行代理店と旅行業者を通じて、中国全土にサルデーニャを売り込む協定を結んだ」と語った。

 旅行パンフレットとサルデーニャのサイトは中国語に翻訳されている。次のステップは、上海とサルデーニャの3つの国際空港を結ぶ直行便を就航させることだ。

 それにしても、中国人はこの小さな島のどこに引かれるのか。「自然の美しさだ。といっても日光浴とかシュノーケリングだけが目的じゃない」と、マチョック。「中国人観光客は探検家だ。人の行かない所に行くのが好きで、考古学に目がない」。彼らは先史時代の石の建造物「ヌラーゲ」に息をのむ。

 島の料理も魅力らしい。子豚のハニーロースト、魚の卵「ボッタルガ」、ウニのスパゲティ、「マロレッドゥ」と呼ばれるシェルパスタ。そのうち多くの中国人シェフが、サルデーニャ料理を学びにやって来るだろう。

 既に上海の複数のショッピングセンターが、客にサルデーニャの「味」を楽しんでもらおうと、島の香り高い最高級の赤ワイン4万本とオリーブオイルを発注している。上海の空港をはじめ中国各地で、サルデーニャの特産品が買えるようになる日も遠くない。

GlobalPost.com特約

[2010年10月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏の8日の電話会談、「非常

ワールド

ウクライナに「重大な空爆の可能性」、米大使館が警告

ビジネス

エア・カナダ、米路線の予約が10%超減少 貿易摩擦

ワールド

米・イラン、11日に第4回核協議 オマーンで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中