最新記事

地球温暖化

オバマが今頃COP15出席を決めたワケ

2009年11月26日(木)17時03分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

国際公約で上院に圧力をかける?

 とは言うものの、出席にはやはり政治的リスクが伴う。「これは最初から、上院の(温暖化対策)法案次第だった」と、環境問題専門のニュースサイト、グリストのデービッド・ロバーツ記者は言う。

「法案は上院を通過しない可能性も残っている。だから(出席すれば)オバマは少しだけ先走っていることになる。だが完全に先走ったわけではないし、そうなることもないだろう。もし彼が自ら進んで行こうとしているなら、それは上院での審議の行方に自信があるからだと見ていい」

 言い換えれば、オバマは議会が国内における削減目標を決める前に国際公約をするという危ない橋を渡ることで、上院に審議を急ぐよう圧力をかけようとしているのかもしれない。

 ホワイトハウスによれば、大統領が土壇場で出席を決めたのは、中国とインドの首脳との生産的な議論の結果だという。もっとも、コペンハーゲンでオバマが2国間あるいは多国間の交渉に実際に参加するかどうかは分かっていない。

 だが何より奇妙なのは、環境保護派の反応だ。ここ数カ月、環境保護団体はオバマがCOP15に出席して交渉を動かすべきだと訴えていた。ところがオバマの出席が決まったのに、彼らはあまりうれしそうな様子を見せない。

「大統領は単なる顔見せ以上のことをしなければならない」と言うのは、環境団体FoE(フレンズ・オブ・ジ・アース)のエリック・ピカ代表理事だ。

「大統領はアメリカが効果的な対策を進めることを保証しなくてはならない。より厳しい削減目標を立てるとか、途上国が温暖化の影響に対処したりクリーンエネルギー主体の経済に移行するための資金援助を行なうといったことを」

 いくら環境保護に前向きな民主党の大統領といえども、こんなにどんどんハードルを高くされることにはうんざりしているに違いない。そろそろコペンハーゲンでの演説のために原稿を用意する時期だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

適正な為替レート、「110─120円台」が半数=帝

ビジネス

ECB、6月利下げが適切 以後は慎重に判断─シュナ

ビジネス

中国4月鉱工業生産、予想以上に加速 小売売上高は減

ワールド

訂正-ポーランドのトゥスク首相脅迫か、Xに投稿 当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中