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アフガニスタン

アメリカは慈善団体ではない

"To Encourage the Others"

負け犬に資源を浪費するな。撤退しても、困るのはアメリカではなく相手国のほうだ

2009年10月22日(木)16時02分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

 アメリカのアフガニスタンに対する無制限の関与を正当化するために、怪しげな議論が続々と展開されている。その一つは、アフガニスタンからの撤退は、アメリカの信用に傷をつけ、他の親米国家もアメリカの持久力を疑い出す、というものだ。

 アメリカがアフガニスタンから手を引けば、弱くて無防備な2、3の国家の指導者が、アメリカ依存を見直そうとする可能性はある。だが、それは必ずしも悪いことなのだろうか。

 アメリカは何十年も、「信用」を維持しなければならないという強迫観念に取りつかれてきた。だがアメリカの信用は、われわれの問題というよりアメリカに依存する国々の問題だ。超大国であることの利点の一つは、アメリカの国益の一部が他の国々の運命に左右されるときでさえ、彼らのほうがアメリカが必要とするより多くの支援をわれわれから必要としているということだ。

 アフガニスタンの場合、アメリカは、度重なる改革要求にも抵抗し続けた無能で腐敗した政府のために戦っている。もし彼らへの支援をやめて政府が崩壊すれば、アメリカに依存する他の国家には強力なメッセージになる。自らの行いを正す能力も気概もない国を、アンクル・サムが永遠に支え続けると思ったら大間違い、ということだ。

ホルブルックの旅券は取り上げろ

 これはパキスタン政府にも有益な影響をもたらすかもしれないし、われわれはアフパック(アフガニスタンとパキスタン)の内情に始終干渉する負担と、それによってかえってこの地域で嫌われるという損な役回りから解放される(そういう意味では、誰かが、パキスタン・アフガニスタン問題担当のリチャード・ホルブルック特別代表のパスポートを取り上げるべきだ。彼がこの地域を訪問すればするほど、パキスタン人の反米感情が高まるようだから)。

 アフガニスタンからの撤退は、アメリカの意気阻喪のシグナルにはならない代わり、各国政府にアメリカは慈善団体ではないことを思い知らせる効果をもつだろう。アメリカ人には、われわれと利害を共にする有能で効率的な指導者を支援する意思がある。だが、無能さを果てしなく援助し続ける義理はない。

 要するに、親米か反米かを問わず、われわれのメッセージはこうだ。アメリカは勝者を支持するが、負け犬に資源を浪費するつもりはない。われわれの支援が欲しければ、まず自らの行いを正せ。そうはっきり知らせることの、どこが悪いのか。

Reprinted with permission from Stephen M. Walt's blog, 22/10/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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