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日米関係

「対等な関係」という現実主義

2009年10月21日(水)16時16分
トバイアス・ハリス(日本政治・東アジア研究者)

ミドルパワーとして生きる道

 慶応義塾大学教授で政治学者の添谷芳秀の言葉を借りれば、民主党の姿勢は「ミドルパワー」的現実主義といえるかもしれない。

 アメリカと中国が巨大な存在感を持つアジア地域に位置する日本は今後、オーストラリアや韓国と同様、自国の行動の自由を最大化しようと努めるだろう。しかし、アメリカに心配は無用だ。民主党はより健全で建設的な対中関係を望んでいるが、アジアにおける中国の一極支配を懸念する点では彼らもアメリカと変わらない。

 日米が協力する道は安全保障以外にも多くある。オバマ政権は、流動性の高い同盟関係を目指す鳩山政権の方針にあらがうのではなく、受け入れるべきだ。自立の度合いを高めてこそ、日本はアジア地域での平和の維持に大きく貢献することができる。

 言うまでもなく、民主党的現実主義は経済の立て直しにも目を向けている。日本の国際的な地位向上の鍵が経済発展にあることを見抜いた吉田茂元首相と同じく、民主党はある事実にうすうす気付いている。日本経済が輸出主導を脱し、労働者や高齢者のためのセーフティーネットを充実させ、国債頼みの経済構造を変えない限り、日本はアジアでも世界でも指導的役割を果たせないままだ、と。

 結論を言えば、日本には政治的リーダーシップが不可欠だ。国民の生活を守るためにも、国際社会で影響力を発揮するためにも。

[2009年9月30日号掲載]

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