がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
National Cancer Institute-unsplash
<証明できればノーベル賞級の成果に...6つの炭素が開く、がん研究の新地平について>
かつて腕一本の「職人芸」だっだ手術。しかし現在、ロボットとAIを味方につけて、外科医療は急速に姿を変えている...。
がん治療の最前線に立ち続けてきた現役外科医が「手術の進化」と次の一手を描いた話題書『変革する手術 「神の手」から「無侵襲」へ』(角川新書)より、第5章「メスのない未来の手術」を一部抜粋編集・転載。
自然界を生きる生物として「がん」を考える
ニンゲンという生物は、37兆個もの細胞が協調する生存活動の成果だ。しかも、腸の中にはそれと同数の細菌が共生している。僕たちは総体として、今の地球の酸素濃度(20%)に適応し、ブドウ糖を主なエネルギー源として、生きている。
がんの別名は「悪性新生物」。よく言ったものだ。径2センチメートルの小さな腫瘍にも数十億のがん細胞がいる計算になる。
最近、膵がんの電子顕微鏡写真をくまなく観察しているが、そこには実に多様な細胞たちが存在し、微小な顆粒で情報交換している様が浮かび上がる。まるでひとつの生き物のようだ。
がん組織だけでなくがん細胞の中に細菌が共生しているという最新研究もある。ヤツらは総体として、ニンゲンの体内、しかも正常な細胞は生きにくい低酸素・貧栄養な環境でしぶとく生存し、増殖し、ついには宿主もろとも滅んでしまう。
がんをひとつの生命体と捉えるなら、自然界全体に視野を広げて見たらどうだろう。一般的には「生きにくい」とされる低酸素・貧栄養環境に適応する生物は、実はたくさんいる。
例えば、土壌や海洋の深部。寄生虫も、宿主体内の低酸素環境に身を潜める期間がある。地球でニンゲンとともに生きる彼らの生存システムを解明することが、がんの「根治」に新たな光をもたらすかもしれない。






