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「ブサイク」は救いようがない、と経済学者は言う(たぶん愛をもって)

The Reality of "Beauty Pays"

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ブサイクな人にもだいたいはいいところがちゃんとあって、それを手塩にかけて育てれば、ブサイクなせいで背負ったハンデを乗り越えるのに役立つだろう。(中略)ブサイクだからって心の底からくじけてしまわなくてもいい。ブサイクなみなさんが背負った重荷はそこまでどうしようもないわけじゃあないのです。(230ページより)


「いや、充分にどうしようもないだろそれ!」とツッコミを入れたくなるほど救いがない。200ページ以上を割いてブサイクのデメリットを羅列した末、結論がこれだとズッコケそうにもなる。しかし、それもまた著者の意図するところなのではないだろうか?

 本を閉じてから、強烈な脱力感のなかでそうも感じた。つまり、きわめて経済学的なアプローチを貫いている一方、本書はギャグとしても読めるということだ。的外れだといわれようがそうとしか思えないし、そうでないと話がまとまらない。

 そして、根底にあるのはきっと、ブサイクに対する愛だ(と思いたい)。そのアプローチは、ポップな曲調に乗せて"Short People got no reason to live(チビには生きる意味がない)"と歌われるランディ・ニューマンの"Short People"に通じるものがある。

 それにしても、ここまで極端なアプローチをされると、やはり気になるのは著者の風貌だ。これでもしも本人が非の打ちどころがないイケメンだったりしたら、本書は壮大な嫌味になってしまうからだ。そこで読了後に迷わず検索してみたのだが、画面に現れたのはいかにも貧弱な老人であった。なんとかギャグとしてのオチができてよかった。

 なお、本書の大きな魅力は翻訳の優秀さである。「ブサイク」とか「デブ」などトゲのあることばがポンポン飛び出すにもかかわらず違和感を与えず、しかもすらっと読ませてしまう理由の大半は、そのセンスのよさにあるといってもいい。


『美貌格差――生まれつき不平等の経済学』
 ダニエル・S・ハマーメッシュ 著
 望月 衛 翻訳


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