優しく切ないラストで泣けず
女優アンジェリーナ・ジョリーと同じくクルーニーは、素晴らしい外見と名声が足かせになっているようだ。短パンにビーチサンダル、花柄のアロハでよろよろ歩き回っても決して間抜けな男には見えない。
でもマットがつかみどころのない人物なのは、クルーニーのせいではない。彼の父親や夫としての欠点を、漠然とほのめかすだけの脚本が悪い。女性がクルーニーを裏切ってリラードのような男と浮気するなら、相当の理由があるべきだ。仕事中毒で家族を顧みなかったのか? 性的に消極的な夫だったのか? 彼が出てくる場面ばかりなのに、マット・キングがどんな人間なのか最後まで分からない。
ラストでは、家族にとって何が重要かという問題を温かく、しかし感傷的になることなく表現している。そこまでの部分がもっとうまく出来ていたら、私はここで泣けたと思う。でも、優しく切ないラストがどこかわざとらしく感じられた。
観客が映画を振り返り、登場人物と共に経験してきたすべてについて感動する。ペインはそう期待したようだ。でも私には、観客も主人公たちも何も経験していないように思えてしまった。
© 2012, Slate
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