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記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?

Aging and Memory Glitches

2026年3月27日(金)18時25分
ミシェル・スピアー (英ブリストル大学解剖学教授)
物忘れをする女性のイメージ

別の部屋に行くと用事を忘れるのは脳がコンテクストを書き換えるから KUES/SHUTTERSTOCK

<昔のことは鮮やかに覚えているのにさっき考えたことを忘れるのは脳の正常な働きだ>

先日、車を運転中にラジオからすっかり忘れていた曲が流れ、一緒に口ずさんでいる自分に気付いた。25年かそれ以上耳にしていない曲なのに歌詞を全部覚えているばかりか、ラップパートもどうにかこなせた。

【動画】「ドアウェイ効果」...なぜ人は別の部屋に入ると、するはずだったことを忘れてしまうのか?

どうしてだろう。普段は別の部屋に入った途端、「あれ、何しに来たんだっけ?」と戸惑うことも多いのに。


こうしたことがあると認知能力が低下した証拠と思いがちだ。けれども数十年前の曲を間違えずに歌えるのに、さっき考えたことを思い出せないのは記憶力が衰えたからではない。脳の正常な働きだ。

若い頃にはやった楽曲の歌詞は「長期記憶」として保存されている。脳のさまざまな部位に情報を書き込み、それらを結ぶネットワークの形で保持されているのだ。長い年月を経ても鮮やかによみがえるのはこの手の記憶である。

家で、車で、クラブで、何度も楽曲を聴くうちにニューロン(神経細胞)同士を結ぶ「シナプス結合」が強化され、効率的で安定したネットワークが形成される。そうなるとイントロをちょっと聴いただけで、ほぼ自動的に楽曲全体を思い出せるようになる。

これとは対照的に、何かをするためにキッチンに行く場合、その何か(タスク)は「作業記憶」として脳の一時的な保管場所に置かれる。作業記憶はわずかの情報をわずかの時間とどめておくだけで、他の事柄に注意が向けばたちまち失われてしまう。

深い知識は失われない

別の部屋に行くと用事を忘れる現象は「ドアウェイ効果」とも呼ばれ、心理学では次のように説明されている。ある場所から別の場所に移動すると、脳はコンテクスト(周囲の状況)を書き換える。前にいた場所で考えたタスク(例えば「眼鏡を取りに行く」)は前のコンテクストに埋め込まれているから、別の場所に移動するとタスクを思い出す手掛かりが見つからず、何をしに来たのか分からなくなる。

非効率な仕組みのようだが、これは組織的な戦略だ。脳は体験を意味のある多数の塊に分割して保管するよう進化してきた。分割保管は膨大な情報の永続的な保持を可能にし、長期記憶の形成を助ける。その一方で2階に行く用事のような塊はすぐに消し去られる。

こう見てくると、記憶の定着度は年齢よりも情報の書き込みの深さと関連があることが分かる。加齢に伴い情報処理速度は多少落ちる傾向があるし、作業記憶は失われやすくなりマルチタスクをこなすのは困難になるかもしれない。だが専門技術など脳に深く刻まれた知識はしばしば維持され、強化されることさえある。

ところで、イライラのもとになるドアウェイ効果はちょっとした工夫で減らせる。手っ取り早い方法は「充電器を取りに2階に行く」など声に出して言うこと。取りに行く物を思い描く「イメージ化」や、移動時にヒントになる物を持って行くことも有効だ。

数十年前にはやったラップを覚えているのに、2階に上がった用事を思い出せなくても年のせいだと嘆かないで。あなたの脳は、何度も反復し、情動で色付けされた情報を一時的な意図よりも優先している。つまり脳がやるべき仕事をちゃんとやっているのだ。

The Conversation

Michelle Spear, Professor of Anatomy, University of Bristol

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


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