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転機は『焼肉ドラゴン』...日本の演劇に魅了され、在日の物語を韓国に届ける女優コ・スヒの挑戦

2025年11月28日(金)17時17分
柾木博行(本誌記者)

『焼肉ドラゴン』2025年の舞台

『焼肉ドラゴン』2025年の舞台より(右から)千葉哲也、智順、パク・スヨン、コ・スヒ、チョン・スヨン、村川絵梨 撮影:宮川舞子

役の年齢を超えてより深く"母"を表現

14年ぶりに同じ役を演じるにあたり、彼女の役への向き合い方は、以前とは何か変化しているのだろうか。

「母親という立場はどの国でも同じだと感じています。役の年齢を自分が超えて、以前よりもっと深く"母"を表現できるようになった気がします。初演の頃は、ヨンスンという役を消化するだけで、もう本当に手一杯だったんですけども、今回に関しては、3人の娘たちと末っ子の息子、そういった家族のことまで感じながら、母というものを演じられるようになりました。その意味で一家の中心的存在として舞台上で生きていると思います」

今回4度目の上演の座組は、日韓からの新旧キャストが混ざり合う。韓国からは店主・金龍吉(キム・ヨンギル)役に『マイ・ディア・ミスター』などのドラマで知られるイ・ヨンソク、三女・美花には、コ・スヒが主宰する劇団「58号国道」のチョン・スヨンが新たに参加している。

「ヨンソクさんとは韓国でもご一緒したことがなかったので、他の"初めまして"の日本のキャストと同じように向き合っています。末娘役のチョン・スヨンは私の劇団の女優。演技のスタイルもよく知っていますし、本当に身を挺して頑張ってくれています」

自身で劇団を旗揚げ

コ・スヒの演劇人生において、『焼肉ドラゴン』がもたらした最も大きな影響の一つは、彼女を新しい創作活動のステージに突き動かしたことだろう。2023年、自らが主宰する劇団「国道58号」を旗揚げしたのだ。この劇団名は、韓国ではなく、鹿児島市から種子島、奄美大島を経て沖縄の那覇市に至る総延長900キロ近い日本の国道から取られている。

「『焼肉ドラゴン』が終わってから、これ以上年を取る前に、勇気があるうちに何かをしなきゃと考えていたんですけど、そのタイミングで沖縄旅行に行きました。レンタカーで国道58号線を走っているときに、その景色が本当に美しくて、自分はこれから劇団を作って新しい活動していくんだと決心したんです。それで韓国に帰ってきてから、いざ劇団を立ち上げて、名前をどうするか悩んだ末に、自分がこの決心をした場所の名前を付けようと思って、58号国道にしました。あとで、インタビューなどで劇団名の由来を聞かれるだろうと思って改めて調べたら、国道58号は日本で一番長い国道だったので、そのように長く続けられる劇団にしたいということから命名した、という後付けの理由もできました(笑)」

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