サッカー=ドイツ代表、「ベルンの奇跡」支えたアディダス捨て、ナイキに鞍替えの衝撃
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背景に輸出大国の苦悩
アディダスはこの春、過去30年以上で初の赤字決算を発表したばかりだった。22年秋にアメリカの人気ラッパー、カニエ・ウェスト(現在の本名は「イェ」)とのパートナーシップを打ち切らざるを得なかったことの影響が重くのしかかっている。提携解消により、ウェストとコラボする「イージー」ブランドのスニーカーの在庫を13億ドル以上も抱えることになったという。
もともとウェストはナイキと提携関係にあったが、13年にアディダスが彼との契約を獲得した。それ以来、「イージー」ブランドは莫大な利益をもたらしていた。ところが、ウェストが反ユダヤ主義的な発言を繰り返し、事業を継続できなくなった。
サッカーの代表チームにユニフォームを提供するメーカーがアディダスからアメリカのナイキに変更されるというニュースは、ドイツを悩ませている不安と経済低迷の傷口をえぐるものでもあった。
今回の決定に対してドイツ国内に湧き起こっている怒りの声は、過ぎ去った時代へのノスタルジアの側面もある。それは、ドイツ製品が世界中の市場に君臨し、フォルクスワーゲン製の大量生産車がドイツに繁栄をもたらし、メルセデス・ベンツのリムジンが世界の独裁政治家たちの御用達だった時代だ。
自動車もサッカーも凋落
その時代には、ドイツの同じ町で生まれたアディダスとプーマが世界のスポーツグッズ業界を席巻していた。そしてサッカーは、イングランドの往年のストライカー、ガリー・リネカーの言葉を借りれば「22人が90分間ボールを追い回し、最後はドイツが勝つ」スポーツだった。
しかし、いまドイツ経済は不振にあえいでおり、昨年はGDPが縮小した。自慢の自動車産業も電気自動車の時代への適応に苦しんでいる。フォルクスワーゲンの名声は、排ガス不正スキャンダルで地に落ちた。強大だった化学産業と鉄鋼産業も、エネルギーと労働のコスト上昇により存続が危ぶまれている。
ファンはアディダスとドイツ代表の長年の絆が失われることを惜しみ続けるかもしれないが、政治家たちの怒りはじきに収まるだろう。ドイツ経済が低迷するなかで、政治家が目を向けなくてはならない問題は多い。
しかしアディダスはドイツ代表の力を借りずに、長引く経営不振から脱却し、ライバルのナイキに再び追い付かなくてはならない。
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