最新記事

中国

中国人の欲しい物が変わった――アリババ越境ECトップ訪日の理由

2017年8月28日(月)11時14分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

franckreporter-iStock.

<アリババグループ越境EC部門の総経理にインタビュー。かつてより注目度の落ちた越境ECだが、実は以前を上回るほど活況を呈しており、しかも売れ筋商品に変化が訪れつつあるという>

「我々は(越境ECで)1億人の"新中産層"にアプローチしています。従来の人気商品である粉ミルクや紙おむつだけではなく、美容機器や生鮮食品、ワイン、ペットフードなど新たなジャンルを新中産層が求める"消費昇級"が起きているからです」

これはアリババグループの越境EC部門であるTモールグローバル(天猫国際)の劉鵬総経理の言葉だ。8月3日、富士ソフトアキバプラザ(東京・秋葉原)のアキバホールで開催された「アジア美容機器パートナーシップ」調印式のために訪日した劉氏に独占インタビューを行った。

越境ECは2015年から2016年にかけ、ポスト爆買いとして注目を集めた。「オムツ買い占め」や「12の神薬」(中国人に人気の高い日本の医薬品)などの記事が日本のメディアを騒がせたことを覚えている人もいるのではないか。

2016年初頭の政策変更により売り上げが急落したため、日本では一時期ほどの注目度はなくなったようだが、実は中国越境EC業界は以前を上回るほどの活況を呈している。しかも、売れ筋商品にも変化が生まれつつあり、例えばTモールグローバルにおける美容機器の売り上げは前年比6.4倍という爆発的な成長を示したという。

takaguchi170828-2.jpg

8月3日、アジア美容機器パートナーシップ締結式で登壇したTモールグローバルの劉鵬総経理(筆者撮影)

冒頭で劉総経理が語った「新中産層」「消費昇級」は近年、中国ビジネスではキーとなっているコンセプトだ。

新中産層とは現在、30代以下で大都市に住むサラリーマン層をイメージした言葉。親の援助もあってすでにマイホームを所持しており可処分所得が高い。また、ブランド品など自分のステータスを誇るような"メンツ消費"にはこだわらず、個性的で健康的、エコな商品を求める傾向が強いという。そのようなニーズに合わせて消費の質が上がっていくことを消費昇級(消費アップグレード)と呼ぶ。

新中産層は海外商品に対する注目度が高く、越境ECの主戦場になっているというわけだ。

【参考記事】中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見えない懐事情

中国越境ECの歴史:「海淘」「代購」から制度変更の混乱まで

さて、ここでまず簡単に越境ECの歴史を振り返っておこう。越境ECとはもともとは「国境を越えた電子商取引」の意。平たく言えば、海外の物がお取り寄せできるネットショッピングである。

とはいっても、実は中国における「国境を越えた電子商取引」もいくつかのカテゴリに分かれる。2000年代前半から始まったのが「海淘」と「代購」だ。

海淘とは、アマゾンやeBayなど海外のECサイトで購入し中国に郵送してもらうという手法だ。転送代行サービス(顧客の代わりに現地国で荷物を受け取り、その後国際便で郵送する)を使うケースもある。

代購とは代理購入の意味で、留学生などを含めた中小零細事業者が顧客の代わりに現地国で購入し国際便で発送するというものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中