最新記事

中国経済

7兆ドルをどぶに捨てた中国に明日はあるか

世界第2位の経済大国になった中国がこのままトントン拍子にアメリカと肩を並べるシナリオのあり得なさ

2015年1月9日(金)12時45分
サム・ウィンターレビー

歪んだ成長 一人当たりGDPでは中国アメリカに追いつくどころか差が開いている Kim Kyung-Hoon-Reuters

 どうやら中国政府は、ここ数年で7兆ドル近い大金をどぶに捨てたらしい。

 英紙フィナンシャル・タイムズ中国版が先日伝えた中国国家発展改革委員会の報告によれば、09年以降の中国の総投資額の半分近くは「無駄な投資」に向けられていたという。中国共産党が直面している経済改革の困難さと党官僚の腐敗の深刻さをあらためて思い起こさせる報告といえる。

 アメリカの世紀は終わり、21世紀は中国の世紀だと強気な予想をするアナリストたちは、13年に貿易総額で世界一になった中国が、GDPでも世界一になるのは時間の問題だと言う。

 そのとおりだろうが、国力の真の基準は国民1人当たりの所得だ。そしてこの点では、依然としてアメリカが圧倒的に強い。世界銀行によれば、国民1人当たりGDPを比べると、アメリカは中国より4万5000ドルも多い。しかもこの差は、縮まるどころか拡大している。

 中国への期待(つまり投資)に慎重になるべき理由はほかにもたくさんある。
なかでも広く知られているのは人口動態だ。長年にわたる「一人っ子政策」の結果、中国はもうすぐ人類史上最も急激な高齢化の危機に直面することになる。現在は高齢者1人を現役労働者6人で支えているが、40年にはこれが1人を2人で支える形になるという。

 また中国経済は短期的・中期的に高い成長を続けるとみられていたが、14年の成長率は90年以降で最も低い水準となる見込みだ。政府系の中国社会科学院は12月に、15年の成長率が14年見通しの7.3%よりも低い7%になるとの予測を発表した。そうであれば、中国経済の次の10年は相当に悲惨だ。

 これまでにも、中国のバブル崩壊を予測する声は多くあった。だが、そのすべてが誤りだった。どうやら中国共産党政治局には、欧米の中国悲観論者が思っている以上の力量があるらしい。経済改革に寄せる党幹部の決意も本物とみていい。

 確かに中国は歴史的に前例のないペースで産業化を進めてきた。しかし共産党による一党独裁のまま、1度の経済的ないし政治的な挫折を経験することもなく先進国の仲間入りを果たし、一気にアメリカと肩を並べることなどあり得るのか。そんなシナリオは、最も可能性が低いと言わざるを得ない。

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国造船業、中国の制裁でも直接の影響ない=アナリス

ワールド

次期UNHCRトップにイケア親会社CEO、スウェー

ワールド

ベトナム、年間10%以上の経済成長目標 26─30

ビジネス

中国レアアース規制の影響、現時点では限定的と予想=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中