コラム

米大統領選を撤退したのに...ケネディJr.の色あせない超変人伝説

2024年09月17日(火)16時01分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
ロバート・ケネディJr., ドナルド・トランプ, 米大統領選

©2024 ROGERS–ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<名家出身のケネディは寄生虫、子熊、クジラ...に関する奇妙なエピソードで話題を振りまき、支持率は急落。でもトランプ政権が実現すれば閣僚になるかも?と米出身芸人のパックンが風刺画で解説します>

ロバート・ケネディJr.は以前から反ワクチンの陰謀論者として有名だが、大統領候補となってからは他の側面もいろいろ分かってきた。

例えば10年以上前、記憶力の低下などを訴え検査をしたら「寄生虫が脳に入り込み、その一部を食べて死んだ」と医師に診断されたと、離婚訴訟で提出した書類でケネディ本人は述べている。風刺画では、誰よりもよく彼の脳内をよく知る寄生虫がHe’s crazy!(彼は狂っている!)と断言する。


そう思っているのは寄生虫だけではない。ケネディは10年前、車に轢かれ死亡した子熊を拾い、それを車でニューヨークに持ち帰り、冗談のつもりで死骸をセントラルパークに遺棄したと、SNSに投稿した動画で語っている。僕は一応芸人だけど、ケネディの「冗談」が全然分からない。

また、マサチューセッツ州の海岸に漂着したクジラの死骸を見つけたとき、チェーンソーで頭部を切り取り、車の屋根に載せて持ち帰った。窓を開けると「クジラ汁」が大量に車内へと流れ込んできたため、ケネディたちは頭にビニール袋を被って車を走らせることにした。周りの車も迷惑そうだったが「そういうことは、日常茶飯事だった」と、ケネディの娘は雑誌に語っている。「茶飯」のおかずがクジラ肉ということかな......。

こういうエピソードが知られたせいかケネディの支持率は急落。先月、選挙活動の停止とともにトランプ候補への支持を表明した。そして偶然にも(?)トランプはケネディを次期政権の要職に起用しようと考えているようだ。何の担当だろう? 寄生虫や熊、クジラとの経験から野生動物や公園を管轄する内務省? いや、ケネディの狙いは保健福祉省長官のようだ。

ケネディは医療の専門家ではないどころか、国費での感染症研究やワクチンでのパンデミック対策に反対する、最も国民の健康を担うのに向かない人。だがトランプは大統領時代、エネルギー省廃止を主張したペリー前テキサス州知事をエネルギー省長官に、温暖化懐疑派で環境保護局を相手に訴訟合戦を起こしたプルイットオクラホマ州司法長官(当時)を環境保護局長官に任命した。むしろ「不適切人」の任命がトランプ流のようだ。

He’s crazy!と言えるのはケネディだけではないね。

ポイント

WHICH ONE OF RFK, JR’S WEIRD FRIENDS IS THE CREEPIEST?
ケネディのヘンテコ友達で誰が一番気味が悪い?

THE BRAIN WORM?
脳の寄生虫?

THE DEAD BEAR CUB?
子熊の死体?

THE WHALE HEAD?
クジラの頭部?

OR THE LYING, RACIST, MISOGYNIST FELON?
嘘つきの人種差別主義者で女性差別者の犯罪人?

HE SEEMS SANE TO ME!
俺には正常に見えるけどね!

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story