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ペロシ下院議長宅襲撃事件から見える、アメリカの闇と分断
ですが、世論調査などの動向を見ていますと、特にこの事件の影響で投票行動が変化する気配はありません。それどころか、こうした非常識な事件を受けても、トランプ派など共和党保守派の勢いは続いているようです。
理由としては2つの要因が考えられます。
1つは、この事件そのものに関する「陰謀論」が拡散しているということです。例えば、ポール・ペロシ氏は襲撃されたのではなく、泥酔して男娼と痴話喧嘩になった挙げ句に負傷したなどという種類のストーリーが広がっています。それどころか、ネット上にはこの事件に触発されて「下院議長を銃撃せよ」といったおそろしい書き込みも出回る始末です。
つまり、コアな保守派の間では、事件にショックを受けて冷静になるなどということは、全く起きていないし、むしろ事件を契機に、より分断と対立を煽る方向に向かっているのです。事件直後の状況としては、そうした現象が指摘できます。
ヘイト感情を票にしようという共和党
2つ目は、そのような分断の背景です。仮に、この襲撃犯デパーペのような人物が、主として経済的な困窮から社会に怨念を抱いたのであれば、右派的なイデオロギーではなく、左派的な格差是正策でも救済が可能だし、社会への不満を政策論に転じることができるかもしれません。
ですが、デパーペの場合は「多国籍企業や移民社会、あるいは社会の多様性」に対して歪んだ憎悪を抱き、その結果として、「この社会のメインストリームを象徴する」人物として下院議長に敵意を抱いたと考えられます。
問題は、共和党の主流派は、こうした憎悪を票にしようとしているという点です。この種の「置き去りにされた白人層」と言われる人々、その人々の激しい怒りのエネルギーが、自分たちの集票マシンに化ける、これに味を占めた共和党の曖昧な態度が、事態をより悪化させている、そこに当面の問題があるのだと考えられます。
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