コラム

ハリケーン被災で政敵と握手、バイデンの成算は?

2022年10月06日(木)18時40分

政敵同士が直接対決するという憶測もあったが…… Evelyn Hockstein-REUTERS

<災害に乗っからなかった姿勢は評価できるが、その「弱腰」は後々問題になるかも>

先週、9月28日(水)にフロリダ半島西岸に上陸したハリケーン「イアン」は、被害規模はもしかしたら米史上最悪とも言われています。その一方で、現場のフロリダ州のロン・デサントス知事(共和)は「ミニ・トランプ」と言われており、「マスク強制の禁止」「教育現場でのLGBTQカミングアウトの禁止」さらには、「ホンジュラス等難民の北部リベラル州への送りつけ」など極端な保守政策で人気があり、11月の中間選挙では自身の知事選を含めて、民主党とは「正面衝突」の構えです。

その知事選でデサントス知事は、ここで再選されることで保守派の代表として大統領の座を狙う構えです。現時点ではトランプの出馬の可能性は五分五分からやや遠のきそうな気配であり、仮にトランプ不出馬の場合は、統一候補の座に一番近いのは彼という見方は相当にあります。民主党としては、この知事選に元共和党の同州知事だったクリスト候補をぶつけていますが、単なる知事の座を争うというだけでなく、保守ポピュリズムの象徴であるデサントスを落選させて、大統領選進出の芽を摘んでおきたい、そんな思惑も濃厚にあります。

そんな中で、被災から一週間が経過した10月5日(水)、バイデン大統領が被災地に視察に訪れると、デサントス知事はこれを迎えて被災状況について報告しました。バイデン大統領はこれを受けて、「完全な復興には数年を要する」という言い方で、被害の深刻度を認識するスピーチを行っています。

超党派的な対応

一部には、大統領はデサントス知事に対して、「避難命令が遅れて犠牲が出た」ことや「難民の北部各州への送りつけは非人道的」だとして、この機会に舌戦を仕掛けるという可能性が指摘されていたのですが、その憶測は空振りに終わりました。デサントス知事も、バイデン政権を厳しく批判することはしませんでした。

つまり、民主党のバイデン大統領と、共和党のデサントス知事は、危機にあたって「政争を棚上げ」して、「超党派的な対応」を選択したわけです。こうした対応には、実は前例があります。

2012年10月のハリケーン「サンディ」では、私の住むニュージャージー州が被災しました。この時は、当時現職であったオバマ大統領(民主)が被災地に駆けつけ、クリスティ知事(共和)と共に「超党派での」復興支援を誓って被災者の喝采を浴びました。この行動は1週間後の大統領選で、オバマ氏が再選されるにあたって、プラスに働いたとされています。クリスティ氏の全国政界における存在感も、この瞬間が起点になっています。

その一方で、ハリケーン対応がジワジワと政権を崩壊に追い込んだ例もあります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏がイラン大統領と電話会談、全ての当事者に

ビジネス

ECB、大きな衝撃なければ近く利下げ 物価予想通り

ビジネス

英利下げ視野も時期は明言できず=中銀次期副総裁

ビジネス

モルガンS、第1四半期利益が予想上回る 投資銀行業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story