コラム

共和党に分裂の気配、どうなる米政局

2022年07月27日(水)15時30分

また、暴徒が「ペンスを吊るせ(殺せ)」と叫んでいた様子は、事件直後から何度もテレビニュースで報じられています。ですが、今回の調査委員会では、その様子が初公開の映像などを含めて生々しく公表されており、世論も政界も無視できなくなっているのは事実です。

この調査委員会の動きが直接・間接に影響したのか、共和党の内部では、トランプに対して公然と反旗を翻す動きが出てきました。具体的には、トランプ派の暴徒に殺害の脅迫を受けつつ、バイデン当選の証書にサインしたマイク・ペンス前副大統領が動き始めたのです。

まず、注目されるのが8月2日に迫ったアリゾナ州知事候補を選ぶ共和党予備選です。ここでは、ペンス氏の推薦するロブソン候補と、トランプ派のレイク候補が激しく競っています。ロブソン候補は州の現職知事と政財界の支持を受けて、クラシックな共和党の選挙運動を行なっています。

民主党の勝機も出てきた?

一方で、レイク候補はトランプと一緒に「2020年の選挙ではトランプが勝利していた」という陰謀論を前面に出しており、戦いはヒートアップしています。仮に、この予備選でペンス陣営が勝利するようですと、党内の雰囲気が一気に「トランプ離れ」を起こすという予測も出ています。

そんな中で、「ミニ・トランプ」と言われている、ロン・デサントス(フロリダ州)知事が、「トランプに距離を置き始めた」ようです。デサントス知事は、これまではトランプの「地元の忠臣」のように行動し、また「マスク義務化の禁止」「学校現場での同性愛カミングアウト禁止」など保守ポピュリズムに走って、トランプ派を含めた保守派の支持を受けていました。そのデサントスは「トランプからの禅譲」を狙っていると言われていましたが、「自立」を模索しているというのです。

ここへ来て動きが急となった共和党の分裂ですが、仮にペンスなどの穏健派が優勢になると、熱心なトランプ派は「旧体制の復活には興味がない」として投票所に来なくなり、結果的に民主党に中間選挙の勝機が出てくる可能性も指摘されています。まずは、8月2日のアリゾナ州知事予備選が注目されます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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