最新記事

メルマガ限定ページ

CIAに潜む中国二重スパイ

2017年04月17日(月)18時30分

中国各地を広く旅した経験のある人材を採用できないとなると、CIAは中国問題のアナリストをゼロから育てなければならない。中国本土で使われている言語の数は多いが、標準語と広東語だけでも「初歩」以上のレベルまで習得するには、たいてい1年以上かかる。

CIAのディーン・ボイド報道官は「リスクの高い経歴の持ち主には、それだけ厳しい審査が待っている」ことを認めた。しかしCIAは「そうした個人が当方のセキュリティー基準を満たせば採用してきたし、今後もそうする」とも語った。

要するに、中国に長く滞在していた人物でも、厳重な審査に合格すれば採用するということ。しかしその審査には、長ければ2年もかかるのだ。

おかげで優れた候補者を採用し損ねているという批判も根強い。「過去に中国との関係があると、履歴書はゴミ箱行きだ。CIAは国家安全省が組織に侵入し、学生を取り込んでいるという被害妄想にとらわれているからだ」と、ある元CIA高官は匿名を条件に本誌に語った。

妄想ではないスパイ疑惑

ここ数十年、国家安全省は主に中国系アメリカ人、特に国防、情報機関、機密に関連する業界で働く人々を取り込もうとしてきた(そのせいか、FBIは中国系アメリカ人、とりわけ中国と深い関わりのある学者や科学者に不当に目を付ける傾向があるとの批判もある)。

CIAのセキュリティー担当者が警戒を強めたのは、シュライバー事件で国家安全省の新たな人材調達法が見えてきたからだ。中国の情報部はCIAに非アジア人を潜入させようとしている、とワイルダーらは言う。

消息筋によると、胡錦濤(フー・チンタオ)政権時代に国家安全省の活動の在り方がトップレベルで議論された。中国の経済と財政担当幹部らは、最大の貿易相手国であるアメリカとの対立を深めることは避けるべきだと主張した。だが情報担当と軍幹部は、超大国になった中国はアメリカに対してもっと強い姿勢で臨むべきだと主張し、議論に勝った。

「近年の大きな変化は、以前にも増して、全てのアメリカ人が標的になっていることだ」とワイルダーは言う。「国家安全省の担当者は欧米をよく知っており、言語能力も以前より高い。彼らは中国に来る白人学生や旅行者を簡単に勧誘できる」

FBIは14年に、シュライバー事件をドラマ化した動画『ゲーム・オブ・ポーンズ』をウェブサイトで公開している。中国にいる若いアメリカ人への警告として制作されたものだが、アメリカのスパイ・ハンターの早過ぎる勝利宣言とも言える。

MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 6
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中