コラム

蓮舫氏へ、同じ「元・中国人、現・日本人」としての忠言

2016年09月15日(木)18時10分

民進党員である筆者は、代表選でもともと蓮舫氏に投票するつもりだったが、彼女のウソを確信し、結局この投票用紙の葉書を投函しなかった

<二重国籍問題を指摘されながら民進党新代表に選出された蓮舫氏は、即刻、辞任するべきだ。国籍放棄の経験がある私から言わせれば、「覚えていない」など馬鹿げた話。おまけに彼女は、ウソをついて時間稼ぎをし、自分を守るために台湾の対日感情を傷つける発言までした>

 蓮舫氏へ。民進党代表選の勝利、おめでとうございます。中華民国と中華人民共和国という違いはあるとはいえ、同じ「元・中国人、現・日本人」として祝福したい。その上で言わせていただく。即刻、民進党代表を辞任するべきだ。あなたの卑劣な対応に私は激怒している。

 二重国籍問題について、私は当初はさほど関心を持っていなかった。さっさと否定して身の潔白を証せばいいのにと思っていたぐらいだ。ところが蓮舫氏が8日にフェイスブックに投稿した弁明を見て驚愕した。「私は日本人です」から始まる文章は二重国籍問題について次のように説明している。


私が台湾法において、籍があるのかというご指摘がありました。高校生の時、父親と台湾の駐日代表処に赴き、台湾籍放棄の手続きを行ったという記憶があります。私は、台湾籍を放棄して今日に至っているという認識です。

 小学生ならばいざしらず高校生にもなって、国籍変更という人生の一大事を覚えていないということがあるだろうか。「ガラパゴス島国の日本人には国籍は後生大事な存在のようですが、外国人の感覚は違います。国籍放棄を忘れるなんて日常茶飯事。とがめだてするような話ではない云々」としたり顔で擁護する人もいるようだが、実際に国籍放棄の経験がある私から言わせれば馬鹿げた話だ。

 私は昨年2月、中華人民共和国国籍を放棄したが、その時には日本人になれるという喜びと長年の祖国との絆が失われたという惜別の情とがあいまって、なんとも言えない気持ちで胸がいっぱいになった。私はあの日のことを一生忘れないだろう。記憶があやふやとはあまりにも人を馬鹿にした言い訳だ。

【参考記事】愛国化する世界──蓮舫氏の二重国籍とフランスの「国籍と名前」論争
【参考記事】「国籍唯一の原則」は現実的か?――蓮舫氏の「二重国籍」問題をめぐって

 さらに声明はこう続いている。


この点について、今般、確認を行いましたが、いかんせん30年前のことでもあり、今のところ、確認できていません。今後も確認作業は行いたいと思いますが、念のため、台湾の駐日代表処に対し、台湾籍を放棄する書類を提出しました。

 このくだりを読んで、蓮舫氏がウソをついていると確信した。日本の国会議員である彼女が照会すれば半日もたたないうちに確認ができるはずだ。それどころか台湾の官報はネットで公開されているため、検索すれば10分で答えはわかる。それを下手なウソで時間稼ぎを図っていたのだ。

 なんのための時間稼ぎなのか? その答えは民進党代表選だろう。党員・サポーター・地方議員は葉書によって投票する。締め切りは12日必着だ。それまでの期間、のらりくらりと二重国籍を認めずにやりすごそうと考えたのではないか。果たして、締め切りの翌日となった13日に蓮舫氏は記者会見を開き、二重国籍の事実を認めたのだった。代表選では503ポイントと過半数を獲得して新代表に選出されたが、党員やサポーターが二重国籍問題についての結果を知らずに投票先を決めたことを忘れてはならない。重要情報が明らかにされない中での投票だったのだから、やはり代表辞任が筋だろう。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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