コラム

「減税」をしても、日本の財政は本当に大丈夫なのか...減税論の根拠、「税収増」の真相とは?

2025年10月09日(木)17時05分

累進課税のバランス崩壊で実質的な増税が起きる

経済が成長したことによる税収増は実体を伴う税収増といえるが、経済が成長しないなか、インフレの進行による税収増はあくまで見かけ上の変化にすぎない。

一方で、物価が上がると税制面ではさまざまな問題が起きてくる。最も大きいのは累進課税のバランスが崩れることだろう。

日本の所得税は、所得が高いほど税率が上がる累進課税となっている。インフレが進んで物価や賃金が2倍になると、年収500万円だった人は1000万円となり、自動的に高額所得者の税率が適用されてしまう。

賃金が上がっても物価も同じだけ上がっているので、実質的に見れば当該国民は1000万円の税負担には耐えられない。累進課税の制度においては、物価上昇に合わせて税率区分を見直さない限り、税率が高い人の数が増えてしまい、実質的に増税になってしまうのだ。


インフレは地方税収にも影響を与えている。

日本では税収の多い自治体とそうでない自治体の財政状況の差を埋めるため地方交付税交付金制度を運用している。この制度も経済が成長しないなかでの恒常的な物価上昇を想定していないため、物価が上がると東京など税収が多い地域の税収が大幅に増え、そうでない地域との格差が想定外に拡大してしまう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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