焦点:孤立イランが報復、ロシア・中国が静観する理由
テヘランのイスラム革命防衛隊(IRGC)航空宇宙軍博物館に展示されたミサイル。2025年11月撮影。Majid Asgaripour/WANA (West Asia News Agency) via REUTERS
Samia Nakhoul
[ドバイ 5日 ロイター] - イスラエルと米国の攻撃によってイランは最高指導者のハメネイ師が殺害され、今やほぼ孤立無援の状態にある。長年の同盟国であるロシアと中国は、攻撃に対する外交的な非難と懸念表明しか提供していない。
イランは中東を越えて報復攻撃をすることで応酬した。ミサイルやドローン(無人機)の攻撃は世界のエネルギー市場に衝撃を与え、米国から中国に至るまでの各国政府を震撼させ、世界の石油供給量のうち2割を担うホルムズ海峡経由の海上輸送をまひさせている。
イランのミサイルはキプロスやアゼルバイジャン、トルコ、湾岸諸国にまで到達し、極めて重要な企業やエネルギーインフラ、米軍基地を標的とした。石油施設や製油所、石油の主要供給ルートが攻撃を受け、原油と天然ガスの供給に深刻な混乱が生じた。
ホルムズ海峡の封鎖を含めた攻撃の影響によってエネルギー価格が急騰し、世界市場が不安定化し、主要国が慌てふためく事態をもたらしている。
アナリストらによると、ロシアと中国の事態を静観する姿勢は冷徹な計算に基づいている。ワシントン研究所のロシア専門家、アンナ・ボルシェフスカヤ氏は「ロシアのプーチン大統領には他の優先事項があり、その最たるものが(侵攻した)ウクライナだ」とし、「ロシアが米国との直接的な軍事衝突に踏み込むのは愚かな行為だろう」と指摘した。
ロシアの高官筋は「イランとその周辺およびペルシャ湾での情勢悪化は、既にウクライナでの戦闘からの関心をそらしている。これは紛れもない事実だ。他には『失った同盟国』への感情論があるに過ぎない」と語った。
中国とロシアはともにこれまで、米国とイスラエルによる圧力に対抗するため、イランが軍事能力を構築することを支援してきた。具体的には抑止力を強化し、米国などの攻撃作戦が複雑で高くつくようにミサイルや防空システム、技術を供給してきたのだ。しかしながら、そうした支援は今や限界に達しているように映る。
<明白な逆説>
中国は長年かけて中東外交に深く関与してきた。一方、ロシアはイランを反西側諸国陣営の支柱だと位置付けてきた。
だが、紛争が激化する中で中国、ロシアの両国は制約を受けた。中国は湾岸諸国へのエネルギーと貿易への依存やアジアの安全保障上の優先課題に、ロシアはウクライナでの消耗戦にそれぞれ縛られた。その結果、明白な逆説が生じている。それはイランは両国にとって戦略的に有益であり続けているものの、戦って守るほどには有益ではないということだ。
ロシアの軍事力と外交的な余力、経済資源がウクライナでの戦闘に吸い取られ続けている中で、プーチン氏の優先課題は米国との一段の緊迫化を避け、中東でのロシアの利益を守ることにある。イランの戦場での運命に賭けることではない。
ボルシェフスカヤ氏は「ロシアがイランを直接支援していたのならば、湾岸諸国やイスラエルを敵に回していただろう」とし、「それはプーチン氏が望むことではない」と語った。
中国の抑制的な対応は、長年の戦略を反映している。それは中核的な利益を守るため、遠く離れた地域での拘束力のある安全保障上の約束を避けるという戦略だ。
<中国は貿易・投資に焦点>
カーネギー国際平和財団のエバン・フェイゲンバウム氏は、米国の同盟が相互防衛義務に基づいているのとは異なり、中国は貿易・投資・武器販売を基盤とする連携を好むと指摘。こうした関係は、東アジアを越えた高コストな紛争に中国が巻き込まれることを防いでいると説明した。
貿易およびエネルギー購入で世界最大級の国である中国はイランや、イランのライバルであるイスラム教スンニ派の湾岸諸国との関係を維持している。中南米でも、トランプ米大統領が今年1月に当時のマドゥロ大統領を拘束させたベネズエラだけに全力を注ぐことは決してなかった。
これに対し、ワシントン研究所のヘンリー・トゥーゲンンダット氏は「中国がさらに何かを行いたいと思ったとしても、戦略的関心や軍事資産を中核的な安全保障から移すことはないだろう」と指摘。その上で「中国が関心を持っているのは、外国での自国の評判だけだ。中国が関心を持っているのは台湾と南シナ海、そして米国と日本からの脅威と認識されているものだけだ」との見方を示した。
イランを巡る紛争は、中国にとって有利に働く可能性さえある。中国は、米軍が東アジアから遠く離れた場所で足止めされ、兵器の備蓄が枯渇する様子を傍観しながら、米国の能力や作戦をリアルタイムで観察することができる。培った知見は、将来の台湾に対するシナリオを考えるのに役立つだろう。
中国の大きな弱点は、ホルムズ海峡を通るエネルギーの流通にある。中国の石油輸入のうち約45%はホルムズ海峡を経由している。しかし、専門家によると中国は戦略的な備蓄を既に構築し、タンカーや貯蔵施設に相当量のイラン産原油を確保している。
専門家は、今回の紛争はロシアと中国に仲介役としての立場を再構築するチャンスを与えたと話す。中国は、王毅外相が欧州やアラブ諸国の外相との協議で対話を促したと発表した。プーチン氏も湾岸諸国の指導者や、イラン当局者と電話会談をしている。
<原油高がロシアに有利に働く>
ロシアも具体的な利益を見いだしている。ウクライナとの戦闘が続く中で原油価格の上昇は経済を潤し、中東に縛られたトランプ政権はウクライナに対する余力が小さくなる。
ボルシェフスカヤ氏は、ロシアはイラン政権崩壊の恩恵を受けないものの、イランの存続が命運を左右するわけでもないと言及。ロシアは紛争の結果いかんにかかわらずヘッジをかけ、柔軟性を維持しており、イラン次期政権が親米となった場合でも関係を構築するだろう。
ロシアの情報筋はシリアを前例として挙げた。ロシアはシリアのアサド前大統領を長年支援しながらも、地中海の基地を維持し、シリア暫定政権のシャラア大統領との関係を迅速に構築した。これは長期的な影響力を得たいとの意向を浮き彫りにしている。
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