ニュース速報
ビジネス

トヨタ、中国生産30年に60万台以上積み増し、現地が開発主導=関係者

2024年11月11日(月)08時04分

トヨタ自動車が、2030年に中国で250万台以上の生産規模を目指す方針を一部の部品メーカーに伝えたことが分かった。写真は4月25日、北京国際自動車ショーで撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

[東京 9日 ロイター] - トヨタ自動車が、2030年に中国で250万台以上の生産規模を目指す方針を一部の部品メーカーに伝えたことが分かった。電気自動車(EV)主体の現地勢に押されて販売が落ち込む中、中長期の目安を示すことで中国事業の先行きに対する取引先の不安を払拭し、世界最大の自動車市場で部品供給網を維持する。事情を知る関係者3人が明らかにした。

関係者2人によると、トヨタは30年の生産規模を250―300万台と想定している。過去最高だった22年の生産台数約184万台から60万台以上積み増す必要があり、トヨタは中国人向けの車両開発の現地化を進め、知能化・電動化技術が進む市場のニーズに合った商品を投入する。合弁2社の生産、販売網も見直し事業全体を効率化する。

トヨタは昨年7月、江蘇省の研究開発拠点と合弁2社の研究拠点との協業を深めることを決定したが、関係者2人によれば、中国人社員が主導する新車開発をさらに増やす。「中国のトレンドを日本勢はつかめていない。中国の人たちに任せて商品開発スピードをアップしないと手遅れになる」と関係者の1人は話しており、中国人のニーズをとらえた商品開発を強化する。

足元は第一汽車の高級車ブランド「紅旗」、広州汽車のEVブランド「AION(アイオン)」など、トヨタの合弁相手が独自に開発した自動車の方が合弁会社の一汽トヨタ、広汽トヨタのモデルよりも売れ行きが堅調に推移している。トヨタはこうした中国メーカー独自のモデルのノウハウも取り込む。

宮崎洋一副社長は6日の決算会見で、「日本人が中国人の車を作るというより、もっと中国人が中国人のための車を作っていただくことにもう一段、入り込んでいきたい」と述べていた。

生産と販売の体制も見直す。現在は2つの合弁会社それぞれで同一車両を生産し、デザインや車名を変えて姉妹車として販売しており、関係者2人によると、車種ごとにどちらかの合弁に集約する。両合弁会社で生産したモデルは、どちらの系列販売店でも買えるようにする。

トヨタ広報はロイターの取材に、「中国市場は競争が激しく、常に様々な取り組みを検討している」と回答。顧客の満足度を高める自動車を開発し、投入していくとした。

トヨタの中国販売は21年の194万4010台をピークに22年が194万0590台、23年が190万7587台と減少が続いている。今年1─10月累計では約141万2900台で前年同期比9.3%減だった。

コロナ禍で経済全体が落ち込んだ上、自動車市場が急速に電動車へ移行し、EVを安価に供給する現地メーカーがシェアを拡大する一方、ガソリン車主体の日本勢は競争力が低下した。

三菱自動車工業は撤退、ホンダと日産自動車は現地生産能力の削減を決めた。トヨタも販売が低迷する中、日系の部品メーカーの中には現地で事業再編に乗り出した企業もある。

関係者の1人は30年に250万─300万台という生産規模について、「目標ではなく、(部品メーカーが)事業計画を立てやすくするための構えの意味合い」と説明。「サプライヤー各社が(日本勢の)中国販売不振のダメージを大きく受けており、一部は拠点の集約や再編を始めている。サプライヤーも疑心暗鬼になっている」と語る。

(白木真紀 編集:久保信博、David Dolan)

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、インドをWTO提訴 太陽光備品やIT製品巡り

ワールド

ウクライナ軍、東部シベルスクから撤退 要衝掌握に向

ワールド

グレタさん、ロンドンで一時拘束 親パレスチナ支援デ

ビジネス

ワーナー買収戦、パラマウントの新提案は不十分と主要
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中