ニュース速報
ビジネス

アングル:大幅高の米株式市場、節税対策の売りやサンタラリーに注目

2023年12月04日(月)14時50分

 12月1日、今年の米株式市場は目まぐるしい展開の中、大幅な値上がりを記録しているが、市場関係者は年内の相場を左右しかねない節税対策の売りやサンタクロースラリー(年末にかけての株高傾向)の行方に注目している。ニューヨーク証券取引所で2021年撮影(2023年 ロイター/Mike Segar)

David Randall

[ニューヨーク 1日 ロイター] - 今年の米株式市場は目まぐるしい展開の中、大幅な値上がりを記録しているが、市場関係者は年内の相場を左右しかねない節税対策の売りやサンタクロースラリー(年末にかけての株高傾向)の行方に注目している。

重要な材料は、引き続き米連邦準備理事会(FRB)の金融政策になるだろう。市場では景気減速で来年上半期にも利下げがあるのではないかとの見方が広がっており、S&P総合500種指数は1日に終値ベースの年初来高値を更新した。年初からの上昇率は19.6%に達している。

同時に、今年は季節的な傾向が特に強い。S&P500指数は、歴史的に株価が最も下落する9月に5%近く値下がりし、ボラティリティーの高さで知られる10月は乱高下した。歴史的に株価が上昇する11月は9%近く値上がりしている。

CFRAリサーチ(ニューヨーク)のチーフ投資ストラテジスト、サム・ストボール氏は「今年は堅調だったが、歴史を振り返ると、12月は独自の動きをすることがある」と語った。

同社によると、12月はS&P500指数の上昇率が2番目に高い月。1945年以降の平均で1.54%値上がりしている。株価が上昇する確率が最も高い月でもあり、77%の確率で値上がりしている。

LPLファイナンシャルの調査によると、12月は前半よりも後半の方が値上がりする傾向がある。1950年以降のデータによると、S&P500指数は12月前半は平均0.1%の上昇。後半はいわゆるサンタクロースラリーで平均1.4%値上がりしている。

<節税対策の売り>

ただ、株価が低迷している銘柄は、年内に含み損を確定して納税額を減らす節税対策の売りで、一段と売りが出やすくなる可能性がある。歴史を振り返ると、こうした割安感の出た銘柄は12月下旬から1月にかけて株価が反発し得る。

BofAグローバル・リサーチによると、1986年以降、1月から10月末までに10%以上下落した銘柄は、その後3カ月間でS&P500指数を平均1.9%アウトパフォームしている。

同社は10月下旬のリポートで、税金絡みで株価が反発する可能性があるとして、ペイパル・ホールディングス、CVSヘルス、クラフト・ハインツなどの買いを推奨している。

株式市場は年初から大幅に上昇しているが、投資ポートフォリオには株価のさえない銘柄が数多く含まれている可能性が高い。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータによると、S&P500指数の上昇分の72%近くは、アップル、テスラ、エヌビディアなど、指数に占めるウエートが高い超大型株の上昇によるものだ。

他の多くの銘柄は低迷しており、大手ハイテク株や成長株の影響を受けにくいS&P500均等加重指数は、年初来上昇率が6%前後にとどまっている。

<投機的な動きも>

11月に株価が大幅高となったことを受けて、投資家の間にすでに過度な高揚感が広がっているのではないかと懸念する声も一部で出ている。

11月は投機色の濃い銘柄が大きく動いた。ストリーミングサービスのロクは75%急騰、暗号資産(仮想通貨)交換業のコインベース・グローバルは62%上昇、著名投資家キャシー・ウッド氏のアーク・イノベーション・ファンドは31%値上がりし、月間ベースで5年ぶりの大幅高となった。

BofAグローバル・リサーチのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は1日のリポートで、同社の逆張りのブル&ベア指標が10月中旬以来初めて「買い」ゾーンから外れたと指摘。「すでにラリーを捉えたなら、買い上げる必要はない」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国習主席、タイ国王と会談 信頼できる隣国を強調

ワールド

ハマス、ガザで支配体制再構築 停戦発効から約1カ月

ビジネス

ニデック、4―9月期純利益58%減 半期報告書のレ

ビジネス

年内に第三者委員会から最終報告が出る状況にはない=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中