ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ勝利で広がるインフレ期待、商品など物色

2016年11月14日(月)10時13分

 11月10日、米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏(写真)が公約通り大規模な減税やインフラ投資を進めれば、世界的にインフレが上昇するとの思惑が市場で広がり、投資家は物価上昇による恩恵が最も大きい資産を手に入れようと奮闘中だ。NY市で9日撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

[ロンドン 10日 ロイター] - 米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏が公約通り大規模な減税やインフラ投資を進めれば、世界的にインフレが上昇するとの思惑が市場で広がり、投資家は物価上昇による恩恵が最も大きい資産を手に入れようと奮闘中だ。

インフレは世界金融危機以来、歴史的な水準に落ち込み、先進国の多くはデフレと戦っている。インフレが大幅に上昇するか、もしくはリフレの状態になれば、市場にとっては潮目が変わる。世界最大の経済大国である米国で物価が上がれば、その影響は海外にも波及する。

このため地域、アセットクラス、業種のあらゆる角度からインフレが追い風となる資産が物色されている。

最も注目を集めているのは国債、工業用金属、資源・建設会社だ。野村の資産アロケーション・外為ストラテジーチームは10日「トランプ氏の政策の中核はリフレ」と指摘。米国での物価や市場金利の上昇には実質成長率の高まりが欠かせないとした。

また、物価上昇により米連邦準備理事会(FRB)の来年の利上げペースは現在の見通しよりも上がらざるを得ないとして、ドルを買って円、ユーロ、カナダドルを売るよう推奨した。

野村はドル/円相場が3カ月以内に現在の106円台後半から110円に上昇すると予想。ドルは対カナダドルでは1.34カナダドルから1.40カナダドルに上がり、ユーロ/ドルは1.09ドルから1.05ドルに下落すると見込んでいる。

テンプルトン・グローバル・マクロ・ファンドの最高投資責任者、マイケル・ハセンスタブ氏も「米国でインフレが上昇し、米国債利回りが上がる一方で、円とユーロが下落して、新興国通貨は全般に上昇すると見込んでいる」と述べた。

5年物インフレスワップが予想する米国のインフレ率は、トランプ氏の勝利を受けて9日に2.38%と昨年7月以来の水準に上昇。インフレ抑制のため金融引き締めが必要になるとの観測から、米国の長期債利回りは上昇した。特に30年債の利回りの上昇が目立ち、今週は30ベーシスポイント(bp)強と週間としては2009年以来の大幅な上昇を記録。利回り曲線がスティープ化した。

利回り上昇の流れは海外にも波及し、アナリストの間からは今年が転換点になるとの声も出ている。

インフレ見通しの変化に伴う世界的な金利市場の動きは、コモディティ―や株式などの市場にも影響が及んでいる。

バンク・アブ・アメリカ・メリルリンチは10日、欧州の資源セクターと石油セクターのポジションをオーバーウエイトにしていると強調した。

銅価格は10日に5%以上上昇し、1年4カ月ぶりの高値をつけた。ニッケルは昨年7月以来、亜鉛は5年半ぶりの高値だ。

こうした資源価格の変動は株式市場にも影響している。例えば世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルの株価は10日に10%以上上がった。

バークレイズは、トランプ氏の財政刺激策で中国経済が活気付けば、鉄鋼セクターにも弾みがつくと予想した。

スペインでは建設大手ACSの株価が9日に5%以上上昇。今週に入ってからの上昇率は10%に達した。

(Jamie McGeever記者)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中