ニュース速報

ビジネス

3月米雇用・賃金ともに増加、FRBは慎重姿勢維持か

2016年04月02日(土)03時44分

 4月1日、3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が21万5000人増えた。写真はデンバーの就職フェア会場で2013年4月撮影(2016年 ロイター/Rick Wilking)

[ワシントン 1日 ロイター] - 米労働省が発表した3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が21万5000人増となり、予想の20万5000人増を幾分上回った。時間当たり賃金も増加に転じ、米経済の底堅さを浮き彫りにした。

だが労働人口も増加したことで加速の兆候が出始めていた賃金の伸びが抑制される可能性があり、米連邦準備理事会(FRB)は利上げに対し慎重姿勢を維持するとみられている。

雇用の増加ペースは幾分鈍化。第4・四半期は平均で月間28万2000人の増加ペースとなっていた。

1・2月分は計1000人下方修正された。

力強い内容となった雇用統計だが、目先の金融政策への影響は限定的とみられている。労働人口の増加は、労働市場にはまだ隠れた緩みが残っているとするイエレンFRB議長の考えを裏付けるためだ。

TD証券(ニューヨーク)の副チーフエコノミスト、ミラン・ムルレーン氏は「これはFRBにとって理想的な状況」と指摘。「労働人口の増加が、雇用引き締まりによる賃金インフレ高進の懸念を和らげており、力強い雇用の伸びの影響が相殺されている」とした。

時間当たり賃金は前月比0.3%(0.07ドル)、前年同月比2.3%それぞれ増加した。エコノミストによると、インフレ率がFRBの目標である2%に到達するには、時間当たり賃金が3─3.5%の伸びとなる必要がある。

失業率は5.0%と、8年ぶりの低水準だった前月の4.9%から悪化したものの、労働参加率の上昇を反映しており、心強い兆候となる。市場予想は4.9%だった。

労働参加率は63%と、前月の62.9%から上昇し、2014年3月以来の高水準となった。62.4%まで低下した昨年9月からは0.6%ポイントの上昇。人数にして約240万人が労働人口に加わり、6カ月間における伸びとしては過去2番目の大きさとなった。労働参加率は男女問わず、ほぼすべての年齢層で上昇した。

就業率は59.8%から59.9%に上昇、7年ぶりの高水準を記録した。

より広義の失業を示すU─6失業率は9.8%と、約7年半ぶりの低水準となっていた2月の9.7%から悪化した。

FRBが海外リスクへの配慮を強める中、今回の雇用統計による金融政策への影響は限定的とみられる。

ナショナル・アソシエーション・オブ・フェデラル・クレジット・ユニオンズ(NAFCU)の首席エコノミスト、カーティス・ロング氏は「雇用統計は好調だったが、FRBの政策スタンスに変更をもたらすことない。今週のイエレンFRB議長の発言を踏まえると、FRBは雇用以外に注目していると考える」と語った。

米雇用統計の発表を受け、米債価格と短期金利先物がそろって下落。ドルは主要通貨バスケットに対し上昇、米株価は小幅安となった。

3月の雇用は幅広い業種で増加したものの、製造業は2万9000人減少し、2009年12月以来の大幅減となった。製造業部門で安定化の兆しがみられる中での減少となった。

鉱業は1万2000人減。ピークをつけた2014年9月以降、18万5000人の雇用が失われている。

建設は9カ月連続で増加し、3万7000人増。小売も4万7700人増と好調。

政府は2万人増だった。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、アルゼンチン支援は「資金投入ではなく信

ワールド

アプライド、26年度売上高6億ドル下押し予想 米輸

ワールド

カナダ中銀が物価指標計測の見直し検討、最新動向適切

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 半導体関連
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中