コラム

「体育座りは体に悪い」という記事でもっと気になったこと

2022年05月13日(金)15時33分

体育座りは体に悪影響が出る、という件の記事には、学童が体育館においてその姿勢で座っている写真が添付されている。もう私は、この光景を見るだけであの時の嫌な記憶がよみがえって辛くてたまらないのだ。全校集会は直接勉学にかかわるものではなく、オンラインの通達で事足りる。令和3年3月、文科省は「全国の学校における働き方改革事例集」というのを出した。これは題にあるように学童側というよりも教員側の勤務状態改善・効率化を狙ったものであるが、そこには「全校集会等を体育館で開催することを廃止し、教員や校長の訓話は教室等でオンライン放送する」旨の事例が書いてあった。遅い。こんなことは既に誰しもが思いつく工夫である。今更にしてだが、ようやくぼつぼつと全校集会廃止、オンライン化の事例が出てきたこと自体は進歩と言えるが、こんな奇妙な全校集会という儀式が平然と教育現場でまかり通っていた事自体、全てが牛歩と言わなければならない。

全校集会を開き、全学童が体育館に集まって体育座りをして訓話を聴くのが当たり前だ、と学校関係者は思っているかもしれない。それは退屈で、無意味と分かっていても、まず寝てやり過ごせばよい、と思っている学童も多いかもしれない。しかし世の中には、そもそもそういった類の集会に参加できない学童もいるのである。もはやこれは座り方の問題にとどまらない。座り方を改善さえすれば全校集会は肯定されるのか、という疑問については全く回答されていない。なぜなら全校集会自体に意味がないからだ。無意味なことに時間リソースを使う必要はない。多様性、多様性と言っている割に、この国の教育現場は中世のようだ。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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