最新記事
猛暑

医薬品にも猛暑の影響...知っておくべき保管方法とは?

2024年8月11日(日)12時02分
錠剤

7月25日、世界の平均気温は7月22日に過去最高を記録した。気候変動による異常な熱波は医薬品そのもの、そして効果を変化させることがある。写真は様々な錠剤。2012年2月撮影(2024ねn ロイター/Srdjan Zivulovic)

世界の平均気温は7月22日に過去最高を記録した。気候変動による異常な熱波は医薬品そのもの、そして効果を変化させることがある。猛暑が続く中で薬をどう保管し、服用する上で気を付けるべきポイントをまとめた。


 

◎暑さは薬の効果や質をどのように変化させるか

一般的な疾患の治療薬は発汗能力や血流速度など、高温に対する身体の反応を損なう結果、患者が通常以上に暑さの影響を受けやすくなる可能性がある。

また、カプセル、スプレー、錠剤、シロップなど、医薬品は形態にかかわらず、ほぼ全て一定の温度範囲で保管しなければ劣化のリスクが増大する。

暑さによる投薬への影響は、個人の健康状態、投与量、環境条件によって異なる可能性がある。患者は暑さに応じて服用の量やタイミングを調整すべきかどうか、医師に相談する必要がある。

◎暑さの影響を受けやすくなる医薬品は

(1)血圧と心不全の治療薬:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬には、のどの渇きを抑える作用があるため、水を飲むべきタイミングが分かりにくくなり、脱水のリスクが高まる。カルシウム拮抗薬はミネラルのバランスを崩して体温調節を難しくし、ベータ遮断薬は発汗を抑えて体を冷やしにくくする。利尿剤も脱水やミネラルバランスの乱れを引き起こすことがある。

(2)アレルギー薬:市販の抗ヒスタミン薬の中には発汗を抑え、体温調節を阻害するものがある。

(3)精神科の薬:ある種の抗精神病薬は患者の発汗能力を抑える。逆に抗うつ薬の中には、発汗を増加させ、喉の渇きを抑えるものもある。アンフェタミンなどの精神刺激薬や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に用いられる薬剤は、中枢神経系と相互作用して体温を上昇させることがある。

(4)甲状腺の薬:甲状腺ホルモン剤も体温を上昇させ、体温調節を阻害し、過度の発汗を引き起こすことがある。

◎薬を保管する際の安全な温度は

極端な暑さ(および極端な寒さ)は、処方薬や市販薬の効果を著しく変化させる。

一部の医薬品は摂氏30度まで耐えられるが、一般的には日光を避け、湿気の少ない15―25度の場所で保管する必要がある。特定の医薬品の保管温度ガイドラインは、メーカーのウェブサイトで確認できる。

ニューメキシコ大学の薬学教員、エイミー・バチリッチ氏によると、薬はそれぞれ異なるため、極端な温度で保管した場合にどの程度劣化するかを予測するのは難しい。

インターネットで販売する医薬品について、温度が上昇した車内や郵便受けなどに何時間も薬を放置すべきではない。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ

ビジネス

主要企業の26年度、営業益12%増を予想 6月から

ビジネス

ポルシェAG、独DAX指数から除外 スカウト24採

ワールド

リスボンのケーブルカー脱線事故で死者17人に、当局
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中