最新記事

台湾

台湾産「自由パイナップル」が中国の圧力に勝利、日本も支援

Taiwan and Allies Rally to Defy China's Economic Coercion on Pineapples

2021年3月3日(水)18時39分
ジョン・フェン
台湾,蔡英文総統,中国,中台貿易,パイナップル

中国から突然禁輸を通告されたパイナップルを宣伝する台湾の蔡英文総統(3月3日)  Ben Blanchard-REUTERS

<中長期的には、輸出の中国依存を脱却しなければいつまた突然禁輸措置を突きつけられるかわからない>

台湾の市民と企業は、収穫の開始直前に中国税関から無期限の禁輸措置を受けた国内のパイナップル生産者を一丸となって支援している。

地元のバイヤーだけでなく、日本などの近隣諸国が、今年中国市場向けに生産したパイナップル4万トン以上を「ものすごい勢いで」買ってくれた、と台湾の陳吉仲(チェン・ジィゾン)農業委員会(農林水産省)主任委員は、2日に語った。

3月1日から台湾産パイナップルの輸入を停止するという中国税関総局の通知を台湾政府が受けたのは、禁輸開始3日前の2月26日のことだった。理由は、昨年以来、台湾産農産物からさまざまな有害生物が発見されたからだという。

台湾行政院農業評議会(COA)は、2020年に中国向けの輸出貨物6200件のうち13件に有害生物がいたという報告を受け、対処していた。そして同評議会は、中国政府が昨年10月に改正輸入規則を導入して以降、有害生物の苦情は受けていない、と述べた。

台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、行き場を失ったパイナップルに対処する政権の計画を発表するフェイスブックの投稿で、土壇場で禁輸を通知した中国政府のやり方を「不意打ち」と非難した。蔡政権閣僚をふくむ政府当局者は、与党民主進歩党の支持者が多い南部の農民をターゲットにした中国による政治的な動きとみて、批判している。

いち早く日本が反応

COAのデータによると、台湾から輸出されるパイナップルのほぼすべてが中国向けで、台湾の年間産出量41~43万トンの約10%を占めている。昨年は4万1000トン以上が中国に輸出された。

台湾政府の計画では、余った5万トンものパイナップルの60%を日本、アメリカ、シンガポールなどに輸出し、残りの40%は国内加工食品メーカーに地元産パイナップルの使用を奨励することで消費するつもりだった。

しかし、蔡政権が主導し、有名人や大企業が支援を呼びかけを始めると、パイナップルの需要は急増した、と陳主任委員は語った。

中国政府の通知から約96時間後の2日正午までに、海外市場への5000トンを含む4万1687トンのパイナップルが売れた、と陳は記者らに語った。この数字は昨年の中国への販売量を上回っている。

世界で最も厳しい食品輸入基準のある日本も、最も速く反応した国のひとつだった。台湾政府のパイナップル推進キャンペーンの初日に、日本からの受注は62%増加した、と陳は言い、今年の対日輸出量は前代未聞の5000トンに達すると予測した。

台湾政府はまた、国外在住の台湾市民からの需要の増加にも対応しようとしている。そのなかには、今のところ台湾からの生の果物の輸入を許可していない国が含まれている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:米レポ市場、年末の資金調達不安が後退 F

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中