最新記事

日本社会

国際比較で日本は最下位、「収入」「家事分担」共に対等な夫婦の比率

2020年11月18日(水)13時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本社会の男女の役割分業の意識は低くなってきているというが frankreporter/iStock.

<夫婦の収入と家事分担がどちらも同レベルの「対等夫婦」の割合は、日本ではわずか1.9%しかない>

現在では学生世代の半分が大学に進学するが、1人ならまだしも子を2人大学に通わせるのは大変なことだ。2人以上の子を大学・大学院に行かせている世帯の年収分布を見ると、半分が1000万円を超えている(総務省『就業構造基本調査』2017年)。

確かに大変そうだが、一馬力ではなく二馬力(共稼ぎ)ならどうにかなるとも言える。大学生の親年代の所得中央値は、男性正社員は650万円、女性正社員は350万円ほどだ(同上)。夫婦の合算で1000万円にはなる。

さまざまなところで言われているが、夫婦の共稼ぎが求められる時代だ。できれば対等の収入があり、家庭内の家事労働を対等に分担することが望ましい。こうした、生きる上でのパートナーシップがある夫婦は、いつでも柔軟に役割をチェンジし、先行き不透明な時代を生き抜いていける。

収入が対等で、家事分担も対等。こういう夫婦はパーセンテージでどれほどいるか。ISSP(国際社会調査プログラム)が2012年に実施した『家族と性役割に関する調査』では、夫婦の家事分担と収入について尋ねている。この設問への回答から、目的の数値を割り出せる。

パートナーのいる25~54歳の女性を取り出し、「夫は自分と対等以上家事をする」「夫と対等以上の収入がある」と答えた人の割合を計算した。また双方の回答をクロスし、どちらにも当てはまる人の割合も出してみた(個票データを利用)。この数値が「収入が対等で、家事分担も対等」という夫婦の率に相当する。

<図1>は、日本とスウェーデンの比較図だ。両方の設問に有効回答をした人が母数で、結果を面積図で表している。

data201118-chart01.jpg

夫が対等以上家事をするという女性は、日本は32.4%、スウェーデンは53.8%となっている(赤色)。夫と対等以上稼ぐ女性の比率は順に5.6%、38.9%でこちらは差が大きい(青色)。

2つの正方形が重なった緑色のゾーンは、双方の条件を満たす女性の比重だ。夫が自分と対等以上家事をし、かつ夫と対等以上の稼ぎがある女性の比率で、日本は1.9%、スウェーデンは20.5%と出た。生きるパートナーシップがある「対等夫婦」の出現率は、日本は53分の1、スウェーデンは5分の1ということになる。家事分担と収入という2つの観点で見ると、ジェンダー平等の差が実に明瞭となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

第1四半期の中国GDPは予想上回る、3月指標は需要

ビジネス

トヨタ、富士松工場第2ラインを17日から稼働再開

ワールド

スーダン内戦1年、欧米諸国が飢餓対策で20億ユーロ

ワールド

香港の国家安全条例、英では効力なく市民は「安全」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 5

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 8

    イスラエル国民、初のイラン直接攻撃に動揺 戦火拡…

  • 9

    甲羅を背負ってるみたい...ロシア軍「カメ型」戦車が…

  • 10

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中