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新型肺炎:どこまで広がるのか

中国一党独裁の病巣が、感染拡大を助長する

CHINA DIDN’T LEARN FROM SARS

2020年2月15日(土)14時30分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

習近平に判断を委ねる硬直したシステムが今回の事態を招いた(昨年11月、北京) Jason Lee-REUTERS

<17年前のSARS危機の教訓を生かさず悲劇を繰り返す根本的な原因は、硬直した共産党体制と官僚主義にある......本誌「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集より>

共産主義の父カール・マルクスは言った。「歴史は繰り返す。1度目は悲劇として、2度目は茶番劇として」――。

中国で猛威を振るっている新型コロナウイルスは、中国国内の死者数が、17年前に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)を既に超えている。

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もちろん、数千人の命を奪うことになりそうな緊急事態を茶番劇と呼ぶのは、悪趣味だし冷酷だろう。しかし、呼び方はともかく、SARSで学んだはずの悲劇の教訓を、中国政府が理解していないことは確かだ。

SARSのときと違って今回は隠蔽していないと、擁護する声もあるかもしれない。1月末に感染拡大が明らかになった後は、複数の大都市を事実上封鎖して3500万人以上を隔離するなど、迅速かつ思い切った措置を取っている、と。

もっとも、そうした措置もむなしく響くだけで、国際社会や中国の国民を納得させることはできそうにない。今回のアウトブレイクの経緯と当局の対応を振り返れば、初動のまずさは一目瞭然だ。

12月上旬に湖北省武漢市で原因不明の肺炎患者が相次いで報告された当初、市当局の対応は不十分だった。ウイルスの大流行の深刻さと危険性を、故意に隠蔽しないまでも、軽視していたようだ。おまけに、ソーシャルメディアの微信(ウィーチャット)で感染拡大に警鐘を鳴らそうとした医療従事者を、警察に捜査させて黙らせようとした。

12月末に感染拡大を知ったとされる中央政府も、非難は免れない。国家衛生健康委員会は12月末に武漢に専門家を派遣したが、その報告を共産党指導部に速やかに上げなかったはずはない。彼らの武漢視察を国営テレビ局の中国中央電視台(CCTV)が夜のニュースで報じた後に党指導部が何もしなかったことも、同じくらい理解し難い。

習近平(シー・チンピン)国家主席が、感染拡大の阻止や社会の安定を守ることなどを求める「重要指示」を出したのは1月20日。既に新型コロナウイルスは中国全土を暴走していた。

武漢での感染拡大が12月上旬から1月半ばまで全くと言えるほど報道されなかったことと、中国のソーシャルメディアやインターネットでこの惨事に言及すると検閲に引っ掛かったことから、中国政府が口封じをしていたことは想像に難くない。特定の話題に関する全国規模の検閲を指示して実行できるのは、共産党中央宣伝部だけだ。

武漢当局がもっと積極的に行動し中国政府がもっと早くに感染拡大をメディアに報道させていれば、これほどまでに悲惨な状況にはならなかっただろう。中国式の一党独裁国家に組み込まれた制度的な欠陥のために、新型コロナウイルスを封じ込める機会は不幸にも失われてしまった。

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