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米国とイランの対立は楽観禁物 トランプは福音派の支持固めを狙う

2019年7月5日(金)17時00分
真壁昭夫(法政大学大学院教授)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

その目的は、米国のキリスト教福音派の支持を固めることにある。2016年の大統領選挙では福音派の80%程度がトランプ氏を支持したといわれ、トランプ氏にとって重要な支持基盤である。

福音派の人々には、親イスラエル政策は宗教上の義務との考えが強い。トランプ氏にとって中東地域での覇権をめぐってイスラエルと敵対するイランへの圧力を強め、屈服させようとすることは福音派からの支持をさらに強め、自らの支持を盤石とするために欠かせない。トランプ大統領の対イスラエル支援策は、時間の経過とともに強化されていくだろう。

「敵の敵は味方」の中東諸国

トランプ政権の中東政策の影響を考える際、「敵の敵は味方」の論理を基にすると分かりやすい。米国にとってイランと敵対するサウジアラビアは味方だ。イスラエルにとっても同様である。一方、イランにとってロシアや中国、トルコは重要だ。

もともとトルコは米国の同盟国である。加えて、アラブ諸国も対イスラエル政策に関して一枚岩ではない。トランプ政権がイスラエルを支持し、イランをたたこうとすればするほど、中東情勢は混迷し、より状況は複雑になる恐れがある。

3月にトランプ大統領は、イスラエルが第3次中東戦争(1967年)で占領したシリアのゴラン高原の主権が、イスラエルにあることを認めた。従来、国際社会はこれを認めてこなかった。トランプ政権は、国際社会のルールを無視している。その上、米国はイランと敵対するサウジアラビアをはじめとするアラブ諸国と連携してパレスチナへの経済・政治支援を計画している。米国は政治支援を棚上げして、経済支援を先に提案した。

一方、「敵の敵は味方」の論理に基づき、イランはロシアや中国との関係を重視している。軍事面に関して、すでにイランはロシアとともにシリア内戦に介入している。ゴラン高原ではイスラエルとイラン勢力の間での緊張感が追加的に高まるだろう。

米国がイスラエルにゴラン高原の主権があると認めたことは、イランにとって重要な意味を持つ。トランプ氏の判断は、軍事介入によってクリミアを支配下に置いたロシアの主張を認めることになる可能性がある。中東地域におけるロシアの影響力拡大は、イランが米国に対抗する上で重要だ。

経済面においてイランは中国との関係を重視している。イランは中国に加えロシア、トルコなどとの通貨協定を結び、米国の制裁回避を目指している。加えて、水面下で中国はイランから原油を輸入し、支援を続けている。中国やロシアの思惑も絡み、中情情勢は一段と複雑になっている。

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