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習派、最高裁トップの粛清失敗? 異例の合同調査で非主流派が巻き返し

2019年3月29日(金)15時25分
西村哲也(時事通信社外信部長)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

全国人民代表大会に出席した習近平国家主席だが(3月15日) Thomas Peter-REUTERS

3月5~15日に開かれた中国全国人民代表大会(全人代=国会)で国家指導者の人事異動はなく、一時失脚説が流れた最高人民法院の周強院長(最高裁長官に相当)は続投となった。政権主流派の習近平国家主席派が裁判の不正疑惑を口実に粛清を画策したが、周氏が属する共産主義青年団(共青団)派などの非主流派が巻き返して、首がつながった可能性がある。

火付け役は元テレビ司会者

騒ぎの発端は、陝西省の炭鉱開発権をめぐる企業間の訴訟に周氏が不当に介入し、片方に肩入れしたという疑惑。周氏は胡錦濤前国家主席や李克強首相と同じく共青団トップ(第1書記)経験者で、共青団派(団派)有力者の1人として知られる。習氏の「1強」体制下で団派は非主流派となったが、江沢民元国家主席派と同様、今でも大派閥だ。最高法院の院長は共産党指導部の政治局メンバーではないが、閣僚より地位が高い「党・国家指導者」とされている。

疑惑は昨年12月に浮上。今年1月には公式調査が始まり、周院長が解任されて後任に習派の応勇上海市長(閣僚級)が起用されるといううわさが流れた。実現すれば、応氏としては大抜てきで、露骨な派閥人事である。

この疑惑の浮上から収拾までの経緯には、社会主義体制の中国では珍しい次のような特徴がある。

(1)疑惑は党・国家機関ではなく、かつて国営中央テレビの有名司会者だった崔永元氏がインターネットを通じて告発した。
(2)最高裁の裁判官としてこの訴訟に関与した人物(王林清氏)がビデオ証言などで崔氏を支援した。
(3)特定の党・国家機関ではなく、複数の機関の合同調査チームが編成された。チームは党中央政法委員会が主導し、党中央規律検査委・国家監察委、最高人民検察院、公安省が参加した。
(4)中国で不正調査を行うと公式に発表された場合、通常は「クロ」の結論を避けられないが、今回の調査で最高法院は基本的に「シロ」とされ、逆に告発者の王氏が虚偽の証言をしたとして糾弾された。

異例の合同調査チーム

当局を批判する言論が厳しく規制されている政治体制下で、崔、王の両氏は最高法院トップに不正疑惑があると公言したにもかかわらず、しばらく言動を規制されなかった。特に崔氏は昨年もトップ女優の范冰冰さんの脱税疑惑を指摘するなど、例外的な「言論の自由」を享受している。警察も手を出せないほど強力な後ろ盾があるとしか考えられない。

中国では普通、高官の不正疑惑は中央規律検査委が調査し、その後、検察に送致されるので、複数の機関による合同調査は異例。しかも、検察や警察などを管轄する中央政法委が主導する調査は極めて珍しい。

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