最新記事

米情報機関

CIAを敵に回せばトランプも危ない

2017年1月23日(月)19時42分
ジェフ・スタイン

大統領就任の翌日、CIA本部を公式訪問したトランプ Carlos Barria-REUTERS

<トランプの対ロ融和路線に反発し、大統領選の期間中からトランプはロシアに弱みを握られていると情報を流し、トランプに「ナチス呼ばわり」されたCIA。両者の関係修復は上手くいくのか。トランプ政権の情報幹部にその手腕はあるか。失敗すればどんな危険があるのか>

 ドナルド・トランプ新大統領、リアルな世界へようこそ。晴れて最高司令官の座についたものの、自ら指名したCIA長官を就任初日の20日に上院で承認させる計画は、民主党議員の反対で出鼻をくじかれた。よって、アメリカで最も重要な情報機関のトップにマイク・ポンペオ下院議員(共和党、カンザス選出)を就任させるには、週明け以降まで待たねばならない。しかもそれは、民主党議員が訴えた「徹底的な審査や質問や議論」を乗り切ってからの話だ。

 大統領就任式から一夜明けた21日、トランプはバージニア州ラングレーにあるCIA本部を公式訪問した。昨年の大統領選挙で、共和党を勝たせるためにロシアが選挙介入したという報告書を出したCIAなど米情報機関のことを「ナチス・ドイツ」呼ばわりしたのはつい最近のことだ。

 だがそれはもう過去の話。バラク・オバマ前政権下でCIA長官を務め、トランプの対ロ融和姿勢に批判的だった「天敵」ジョン・ブレナンも退任した。トランプはCIA職員を前に15分ほど演説し「あなた方を1000%支持する」と強調。やっと邪魔者が去ったといわんばかりに友好モードを演出し、関係修復を図った。

トランプ疑惑の情報収集は続く

 トランプも、得意先には逆らうな、という格言をわきまえるべきだろう。

 CIAは新聞を発行するわけではないが、情報の効果的な発信の仕方は心得ている。ロシア政府がトランプを勝たせるためにヒラリー・クリントンに不利な情報を入手・リークしたという疑惑の証拠をめぐってクリントンとトランプが舌戦を繰り広げたときも、それは十分証明されていた。情報機関は議会に情報を提供し、事の成り行きを見守るのが常だ。

 それでもトランプやその側近たちが疑惑を無視し続けるなら、情報機関は次の情報を議員たちにリークする。トランプが勝利しても、調査を中止する気配はない。トランプが右手を挙げて大統領就任の宣誓を行った間でさえ、CIA(米中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、FBI(連邦捜査局)、これらの情報機関を統括する国家情報長官、そして司法省や財務省内の金融犯罪取締ネットワークは連携して、「ロシアが密かにトランプを勝たせるために注ぎ込んだ資金の動き」を突き止める証拠を追っていた。

【参考記事】オバマが報復表明、米大統領選でトランプを有利にした露サイバー攻撃

 ブレナンが去った後、CIA本部に足を踏み入れたトランプが抱いたであろう高揚感はすぐに消え失せそうだ。CIAの諜報員や捜査官はロシアの介入について徹底調査を続け、議会に説明する機会を得るだろう。ただしそれは、トランプに絶大な支持を寄せる情報機関内部の人間が、妨害しなければの話だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、ワシントン出発 米ロ会談のためアラ

ビジネス

中国人民銀行、物価の適度な回復を重要検討事項に

ビジネス

台湾、25年GDP予測を上方修正 ハイテク輸出好調

ワールド

香港GDP、第2四半期は前年比+3.1% 通年予測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化してしまった女性「衝撃の写真」にSNS爆笑「伝説級の事故」
  • 4
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 5
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 6
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中