最新記事

エンターテインメント

【動画】外国人を(嵐よりも)魅了するサムライ集団「TAO」って何者?

2016年2月23日(火)11時09分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

 さらに、男性ばかりの舞台をキリリと締めるのはクールなアジアンビューティーを身にまとう4人の女性たちだ。座長でもある西亜里沙が叩く太鼓にはその日で一番しびれたし、彼女たちが奏でる琴や篠笛は男性的な舞台に女性的な柔らかさを加えていた。次々と変わる「斬新な和装」を思わせるステージ衣装も格別で、「ファッション大国」としての日本の顔を惜しみなく披露する。

 外国人も声を挙げて笑う絶妙なユーモアさえ登場するTAOの舞台は、まさに世界に通じるエンターテインメント。それもそのはず、『DRUM HEART』(日本では昨年『百花繚乱 日本ドラム絵巻』として上演)を演出したのは宮本亜門であり、衣装を手掛けたのは国際的ファッションデザイナ―のコシノジュンコだった(宮本による演出は今作が初めてで、コシノとは2012年からタッグを組んでいる)。

ny160223-b.jpg

まるで「太鼓を叩くEXILE」のような勇ましさ © DRUM TAO

結成は95年、当初から海外を見据え、22カ国で650万人を動員

 さてこのTAO、一体何者なのか。

 大分県を本拠地とするTAOのプロダクション事務所によれば、男女34人のパフォーマーは18~45歳の平均25歳。入団希望者は年間100人に上るが、狭き門をくぐって入団できるのはそのうち10人程度だ。ほとんどが和太鼓経験者だが、前職はロックバンド、美容師、バーテンダー、自衛隊員などさまざま。彼ら全員が大分県竹田市久住町の山奥に建設された複合施設「TAOの里」で共同生活を送りながら、毎年新作のオリジナル舞台を作っているという。

 ちなみにTAOの里は稽古場やステージ、トレーニングジム、スパ、ゲストハウスなどを備えているが、住居空間は研修生だと集団でログハウス、新人はプレハブ、中堅はホテルの客室のような部屋に1人ずつ、ベテランは高級マンションと、出世するごとにランクアップしていくというから面白い。

 TAOは結成時から海外を見据えていた。もともとはラスベガスにチャレンジしたいという和太鼓グループがその夢を実現できず、路頭に迷っていたところに、外資系商社や大手流通企業で勤務経験のある藤高郁夫氏が手を貸す形で95年に活動を開始。太鼓とは無縁だった藤高氏が社長となり、舞台演出や音楽制作など総指揮を執って現在のTAOを作り上げたという。

 日本でも全国ツアーをするなど多くの公演をこなしているが、2004年には初の海外公演を果たし、スコットランドで毎年開かれる世界的な芸術祭「エジンバラ・フェスティバル・フリンジ」に参加。1800団体が集う同フェスティバルでその年と翌年のチケットセールスNo.1を樹立するほど人気を博してワールドツアーを開始し、現在までにアジアを含む世界22カ国で650万人以上を動員してきた。21年目での「ブロードウェイ」デビューは、むしろ遅すぎたと言えるほどかもしれない。

 当然のことながら、当初は伝統芸能を現代的なエンターテインメントに昇華させるTAOのやり方には各地の和太鼓保存会などから賛否両論あったという。とはいえ、TAOの舞台が日本の和太鼓ファンにとどまらず、世界で受け入れられているのは事実だ。TAOが今後向かうのは、アイリッシュダンスとアイルランド音楽の世界的ショー『リバーダンス』のような道かもしれない。アイルランドの「顔」にまで成長したリバーダンスは、TAOと同じ95年の初演以来、全世界で2500万人以上を魅了してきた。

 TAOは「日本の顔」になれるのだろうか。14年には観光庁から「観光庁長官表彰」を送られたというが、政府はどうか、全世界に放映されるオリンピックで「嵐のニャー」と同じ轍は踏まないでほしい。TAOにはCBSとニューヨーカー、国外のファンたちが太鼓判を押している。少なくとも、外国人から失笑されることはないはずだ。

ニュース速報

ワールド

お知らせ=重複記事を削除します

ワールド

ラウル氏、キューバ共産党トップ退任表明 カストロ時

ワールド

日米首脳、中国を強くけん制 共同声明に台湾やウイグ

ワールド

米政権、難民受け入れ拡大計画を棚上げ 前政権の1.

MAGAZINE

特集:日本を置き去りにする デジタル先進国

2021年4月20日号(4/13発売)

コロナを抑え込んだ中国デジタル監視の実態。台湾・韓国にも遅れた日本が今すべきこと

人気ランキング

  • 1

    女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を引きずられる──中国

  • 2

    世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの小型ナイフも持ち歩けない日本に思うこと

  • 3

    ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

  • 4

    東芝 車谷社長の何が悪いのか?

  • 5

    ブロックチェーン技術の新展開「NFT」が、これほど盛…

  • 6

    日米を代表する2大怪獣が激突 『ゴジラvsコング』勝…

  • 7

    原発処理水の海洋放出「トリチウム水だから安全」の…

  • 8

    仮想通貨で7億円稼いだ「億り人」の意外な素顔と「成…

  • 9

    ふるさと納税は2年で750%増、熊本の人口4000人の町…

  • 10

    新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタ…

  • 1

    青色の天然着色料が発見される

  • 2

    緑豊かな森林が枯死する「ゴーストフォレスト」が米国で広がっている

  • 3

    ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

  • 4

    ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数…

  • 5

    世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの…

  • 6

    ビットコインが、既に失敗した「賢くない」投資であ…

  • 7

    日本だけじゃない...「デジタル後進国」のお粗末過ぎ…

  • 8

    「頭の切れる人」とそれほどでもない人の決定的な差 …

  • 9

    女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を…

  • 10

    「日本人なら中国人の3分の1で使える」 クールジャパ…

  • 1

    太平洋上空の雲で史上最低気温、マイナス111度が観測される

  • 2

    観測されない「何か」が、太陽系に最も近いヒアデス星団を破壊した

  • 3

    国際宇宙ステーションで新種の微生物が発見される

  • 4

    「夜中に甘いものが食べたい!」 欲望に駆られたとき…

  • 5

    EVはもうすぐ時代遅れに? 「エンジンのまま完全カー…

  • 6

    30代男性が急速に「オジサン化」するのはなぜ? やり…

  • 7

    孤独を好み、孤独に強い......日本人は「孤独耐性」…

  • 8

    ブッダの言葉に学ぶ「攻撃的にディスってくる相手」…

  • 9

    カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座…

  • 10

    硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月