Picture Power

薬が効かない「超多剤耐性」結核の脅威

Ravages of a Killer

Photographs by David Rochkind

薬が効かない「超多剤耐性」結核の脅威

Ravages of a Killer

Photographs by David Rochkind

手前から)結核患者レマット・シーク、息子と母。10分も座っていられないほど衰弱しているが、治療を断念せざるを得ない

 世界保健機関(WHO)は3月18日、薬による治療が困難な「多剤耐性」(MDR)結核の感染者は08年で年間44万人、その約半数はインドと中国で発生しておりMDR結核の中でも主要な結核治療薬のほとんどが効かない「超多剤耐性」(XDR)結核の感染が、今年3月時点で世界58カ国で確認されたと発表した。

 不定期な治療が耐性菌を生む原因になる。ムンバイの母親の家の床に横たわる結核患者レマット・シークは、DOTSという患者が薬を飲み込むのを医師やスタッフが目で確認する療法を徹底することで成果を上げている治療センターの近くに身を寄せたものの、夫の仕事の都合で治療を中止して自宅へ戻る予定だという。経済的理由から結核治療に必要な6〜8ヶ月間、週3回定期的にセンターへ通うことができず、シークのように途中で薬の服用をやめてしまう人々が後を絶たない。

 人々が密集して暮らす貧しいスラムでの感染率は高く、栄養状態の悪さや不衛生な環境から死に至るケースも多い。結核菌は患者が亡くなった後も周囲で暮らした者の体内に潜み発症を待っているのかも知れない。

 世界結核デーの今日も、貧困と病の連鎖により多くの患者たちに死の影が迫まっている。

――編集部・片岡英子

Photographs by David Rochkind-WHO Stop TB

MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中