高校無償化、東京都の「独走」で何が起きる? 小池都知事の思惑と、実現時のインパクトとは
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<授業料助成から所得制限を撤廃するという小池百合子都知事の方針は、「裏金」問題に揺れる国政にも大きく影響する可能性が>
東京都が高校教育の実質無償化に乗り出した。国政においても教育無償化が再び注目を集めており、解散総選挙や場合によっては政界再編も取り沙汰されるなか、教育政策が政局の引き金となる可能性も出てきた。
小池百合子都知事は2023年12月5日、都議会の所信表明において、私立高校も含む全ての高校の授業料を実質無償化する方針を明らかにした。これまで都の授業料助成には所得制限が存在していたがこれを撤廃する。加えて給食費の支援も行うとしており、都政として教育支援を強化する流れを鮮明にした。
小池氏はもともと教育無償化を強く主張していたことや、24年夏に知事選が控えていることもあり、所得制限の撤廃はある程度予想されていたものの、このタイミングでの表明にはもう1つの狙いがあったと考えられる。それは国政に対する自身の影響力の維持である。
所信表明において小池氏は、教育支援は本来、政府主導で行うべきと発言しており、国政への注文がセットになっていた。ほぼ同じタイミングで岸田政権が多子世帯の大学無償化を含む「こども未来戦略」を打ち出し、国民民主党の前原誠司氏が「教育無償化を実現する会」という新党結成を表明するなど中央政界でも無償化をめぐって動きが活発になっている。
岸田政権は末期症状を呈しており、最大派閥である安倍派幹部が一斉に捜査対象となるなど、政権崩壊や場合によっては政界再編の可能性すら取り沙汰される状況だ。こうした時期にあえて国政に対する注文という形で小池氏が無償化を掲げたということは、今後、国政でもこの問題がカギを握る可能性について示唆するものと言えるだろう。
東京都への人口集中を加速させる?
これまで教育無償化は何度も議論されながら、内容が二転三転してきたという経緯がある。子育て世帯や教育に熱心な世帯を中心に大きな支持を集める材料となり得る一方、全ての人が同じ条件で学校に通えることについて異議を唱える人も存在している。
加えて無償化政策は財政負担が大きく、政府主導で一気に無償化を進められない事情があり、そうであるが故に、政局の材料になっていた面があることは否定できない。
今回も選挙に関係した動きであることは間違いなく、本格的に日本全体が無償化に舵を切るきっかけとなるのかは何とも言えない。
単なる選挙目当ての掛け声で終わった場合、東京都のように財政的に余裕のある自治体だけが率先して無償化を進める流れとなり、近隣自治体との格差が広がる可能性が出てくる。実際、埼玉県民や千葉県民の中からは都内に転居したいという声も聞こえてきており、東京都への人口集中を加速させるかもしれない。
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