<再生可能エネルギーを巡る世界の競争は、もはや環境政策ではない。エネルギー安全保障、AI、そして水素を軸とした新たな化学工業へ――>
国際社会における再生可能エネルギーの位置付けが根本的に変わったことで、日本とアメリカを除く各国が、雪崩を打ったように再エネシフトを進めている。
かつて再エネは、欧州を中心に環境問題対策として普及してきたが、ロシアによるウクライナ侵攻と米国のイラン攻撃で全てが変わった。
もはや石油に頼れないことを自覚させられた各国が、エネルギー安全保障の切り札として再エネを再定義しつつある。加えて、発電コストの劇的な低下によって、再エネとAIインフラが結び付き、産業のパラダイムシフトも同時に進んでいる状況だ。
再エネの発電コストはイノベーションの結果、驚異的に低下しており、最も安価なエネルギー源であることがほぼ確定的となった(新設火力との比較で2割~5割安い)。最大の欠点だった不安定性も、蓄電池システムの性能向上とAIを活用したスマート送電網の進歩によって完全に克服されたとみてよい。
一般的に再エネ発電所は、日照や風況が十分ではない事態を想定し、多めに建設されることが多い。逆に言えば、天候が良すぎた場合に余剰電力が発生することになり、以前はその処理が課題とされてきた。
だがここ10年で当該問題がほぼ解消されただけでなく、余剰電力はむしろ次世代産業のエンジンとなりつつある。再エネで余剰電力が生じた場合、その電力をAIの学習に振り向けることで、AI社会のアキレス腱とされる電力不足問題をクリアする試みが進んでいる。
つまり、再エネを普及させることで電気代を安くし、さらにAIの利用コストも低下させるという、まさに一石二鳥の仕組みが実現しつつあるのだ。