ニュース速報

ワールド

クレムリン無人機攻撃、ロシア国内発射の公算大きい=米専門家

2023年05月06日(土)01時41分

ロシアの首都モスクワ中心部のクレムリンに対するドローン(無人機)攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとの見方を示している。写真は5月4日、ドローンによる攻撃の跡が残るクレムリンの屋根(2023年 ロイター)

[ワシントン 5日 ロイター] - ロシアの首都モスクワ中心部のクレムリンに対するドローン(無人機)攻撃について、米国のドローン専門家はドローンは国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算が大きいとの見方を示している。

ロシア大統領府は3日、大統領宮殿内のプーチン大統領の居所を目指して無人機2機が飛来したが軍と特殊部隊がレーダー戦システムを用いて無効化したと表明。ロシアはウクライナがプーチン氏の殺害を図ったと非難したほか、4日になって攻撃の背後に米国の存在があると指摘した。

各国政府やオープンソースの情報アナリストは、目的地に飛来し爆発するように設計されたドローンの起源を突き止めようと、ドローンが撃墜される画像などを分析している。

非営利団体レジリエント・ナビゲーション・アンド・タイミング・ファウンデーションのダナ・ゴワード代表は、ロシアは2015年ごろから全地球測位システム(GPS)の偽信号を配信して測位信号をハッキングする「スプーフィング(なりすまし)」と呼ばれる手法でドローンを自動的に遠ざける対抗策を使い、クレムリンをドローン攻撃から守っていると指摘。こうした先進の防衛策が導入されていることを踏まえると、今回の攻撃に利用されたドローンはGPSを利用せずに手動で制御され、近くから発射された可能性があるとの見方を示した。

ドローン製造業者のBRINCの創業者兼最高経営責任者(CEO)、ブレーク・レスニック氏は「ドローンが検知され破壊されることなく、モスクワ上空を飛行し、クレムリンに到達できたのは驚きだ」と指摘。クレムリンにはレーダーと視覚追跡をベースにした近接防御システムがいくつもあり、弾丸や爆発物を使ってドローンやミサイルから守ることもできるにもかかわらず、ドローンがクレムリンに到達したのは「比較的小さなサイズと低い高度が役に立った可能性がある」としながらも、「ドローンがGPSを利用せず、地上管制局と通信していなければ、スプーフィングを回避できた可能性がある」と述べた。

長距離の飛行が可能な軍事用ドローンを保有している国は限定されるとの指摘もある。ドローン専門家で技術者擁護団体バーティカル・フライト・ソサエティーのダン・ゲッティンガー氏は、中国、インド、台湾、ウクライナなどは400キロメートルを超える距離を飛行できる大型軍用ドローンを保有しているとしながらも、今回の攻撃に使われたドローンがロシア国内から発射されていた場合、実行できるドローンの数はかなり多くなるとの見方を示した。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中