ニュース速報

ワールド

米独、ウクライナに戦車供与へ タブー破り戦況転換なるか

2023年01月26日(木)05時46分

米政府は、ドイツに続きウクライナに主力戦車「エイブラムス」を供与することを決めた。ウクライナは対ロシア戦における転換点になりうる動きとして歓迎の意を表明した。昨年5月、ワシントンで撮影(2023年 ロイター/Elizabeth Frantz)

[ワシントン/ベルリン/キーウ(キエフ) 25日 ロイター] - 米政府は25日、ドイツに続きウクライナに主力戦車「エイブラムス」を供与することを決めた。ウクライナは対ロシア戦における転換点になりうる動きとして歓迎の意を表明した。

バイデン米大統領は25日、エイブラムス31両をウクライナに供与すると発表。これまで維持してきた反対姿勢を撤回し、ウクライナ支援で欧州との結束を鮮明にする。

米国は、エイブラムスは維持や管理が難しく、ウクライナ軍への訓練が困難という理由で供与に慎重な姿勢を維持していた。しかし、より操作性の高い「レオパルト2」提供を巡り独を説得するため方針を転換した。

バイデン大統領は独の決定を評価した上で、ロシア側の期待に反し、欧米の同盟国は「完全かつ徹底的に結束している」と言明した。

ウクライナは数カ月前から西側の主力戦車提供を要請してきた。

バイデン政権幹部によると、エイブラムスが供与されるまでには数カ月かかる見通し。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も、戦車がウクライナに到着するには数カ月が必要と述べた。  

<勝利への道>

米ホワイトハウスは25日、バイデン大統領が独、フランス、イタリア、英国の首脳と電話会談を行い、ウクライナに対する支援で緊密に連携することを確認したと発表した。

独にはナチス時代の反省に立ち攻撃的兵器の輸出に大きな抵抗がある中、まず軍事備蓄から14両のレオパルト2を輸出することを決定。ポーランドなどのパートナー国が保有する同戦車の供給も認めた。

ショルツ首相は同国議会で「ウクライナ支援で常に最前線に立つ」と語った。

ウクライナのゼレンスキー大統領は米国の決定を米国の決定を「勝利への重要なステップ」とした上で、独にも感謝を表明。自由主義世界はウクライナの解放という「共通の目標の下、かつてないほど団結している」と述べた。

その後、恒例の夜のビデオ演説で、ウクライナ軍の戦力として戦車を供給するための鍵は、スピードと十分な数だと述べた。

また、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と話し、長距離ミサイルと航空機の供給を要請したと明らかにした。

<タブーが破られた>

米独の決定は、西側諸国にとってウクライナ支援における最後のタブーの一つを決定的に崩した。西側諸国はこれまで、核保有国ロシアを刺激することを恐れ、ウクライナに重火器を送ることに消極的だった。

ロシアは独の決定に激しく反発。ロシアのネチャエフ駐独大使は「この極めて危険な決定は、紛争を新たなレベルの対立に導く」とし、「すでに嘆かわしい状態にある両国の関係に取り返しのつかない損害を与えるだろう」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米サウジ投資イベント、シェブロンやファイザーのCE

ビジネス

仏、企業から92億ユーロの新規投資を獲得

ワールド

メンフィスへの州兵派遣を一時差し止め、テネシー州裁

ワールド

インドネシア火力発電の廃止計画に暗雲 先進国からの
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中