ニュース速報

ワールド

米シェール業界、OPECプラス大幅減産合意でも増産に動かず

2022年10月05日(水)09時41分

 「OPECプラス」が大幅減産に合意しても、米シェール業界に原油やガスの増産を促すきっかけにはならない――。複数の業界幹部はロイターにこうした見方を示した。写真は2014年10月、コロラド州ロングモントで撮影した掘削装置(2022年 ロイター/Rick Wilking)

[4日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくる「OPECプラス」が大幅減産に合意しても、米シェール業界に原油やガスの増産を促すきっかけにはならない――。複数の業界幹部はロイターにこうした見方を示した。

OPECプラスは5日の会合で、場合によっては日量100万バレル超の減産を検討する見込み。実現すれば2020年の新型コロナウイルスのパンデミックで市況が急激に悪化して以降で最大の減産となる。

こうした減産が決まれば、OPECプラスがある程度の市場支配力を取り戻した証明になるだろう。一方、バイデン政権には燃料価格高騰への対応を求める声が一段と強まりそうだ。原油価格は6月1日以後で28%下がったが、ガソリンと軽油の価格は供給懸念を背景に再び上昇している。

しかし石油掘削企業パターソンのアンディ・ヘンドリクス最高経営責任者(CEO)は「(OPECプラスによる)減産の可能性を見据えて、『その穴埋めをする好機だ』と話している生産者は見聞きしたことがない」と述べた。

米国のシェール業界は、2016年の相場急落後迅速に立ち直った時期と比べて、今はより多くの制約がある。設備や人手が限られ、資金も足りず、投資家からはリターン向上を迫られており、これらが生産を抑える要因になっている。業界幹部は、OPECプラスが今週どんな決定を下しても、シェール業界が抱える制約は払拭されないと指摘した。

株式非公開の生産者なら株主からの圧力はないものの、サプライチェーン(供給網)に起因する問題や資金不足がやはり対応能力の足かせになるとみられる。

アンシュッツ・エクスプロレーションのジョセフ・ドミニクCEOは「われわれのポジションが上下どちらの方向にも変化するとは想定していない。これは来年の事業も含まれる」と語り、同社は既に来年の設備投資予算をほぼ決定しているので、OPECプラスの減産があっても影響は受けないと付け加えた。

エンタープライズ・オフショア・ドリリングのブラッド・ジェームズCEOは「米国の生産者にとってより多くの資金が使えるようになるまで、増産には四苦八苦する。今後もOPECが価格を支配する状況が続くだろう」と予想した。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米中通商摩擦再燃が重し

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ301ドル安 地銀巡る懸念

ワールド

ボルトン元米大統領補佐官を起訴、国家安全情報の保持

ワールド

トランプ氏、プーチン氏と「2週間以内に」ハンガリー
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中