ニュース速報

ワールド

日本政府、サハリン2権益維持へ商社と調整 ロシアの条件待ち=関係者

2022年07月16日(土)13時37分

日本政府は極東ロシアの石油・天然開発事業「サハリン2」の権益維持に向け、実際に出資する商社を支援する方針を固めた。現在の事業を自国企業に移管する方針を示したロシアからの条件提示を待ち、三井物産、三菱商事と本格的な調整に入る。写真はサハリン2。2006年10月、サハリン州プリゴロドノエで撮影(2022年 ロイター/Sergei Karpukhin)

[東京 16日 ロイター] - 日本政府は極東ロシアの石油・天然開発事業「サハリン2」の権益維持に向け、実際に出資する商社を支援する方針を固めた。現在の事業を自国企業に移管する方針を示したロシアからの条件提示を待ち、三井物産、三菱商事と本格的な調整に入る。事情を知る関係者3人が明らかにした。

ロシアのプーチン大統領は先月末、サハリン2の事業を新会社に移す大統領令に署名。日本の商社などが権益を維持するには改めてロシアに申請して認められる必要があり、ウクライナ情勢を巡って主要7カ国(G7)と足並みを揃える日本政府の対応が注目されていた。

事情を知る政府関係者らによると、このほど権益維持を目指す方針を固めた。経産省関係者はロイターの取材に「商社が権益維持で動けるようにサポートする方向性を決めた」と説明。「商社にはこれから伝える」とした。

岸田文雄首相は14日の記者会見で、「日本の権益を守り、LNG(液化天然ガス)の安定供給確保ため官民一体で対応したい」と述べていた。

ロイターは経産省にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。三菱商事は「政府・パートナーと連携の上で協議していく」とした。三井物産のコメントは得られていない。

サハリン2は三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資。日本のLNG輸入量の約9%を占める。市場で調達するよりも安価なため、仮に権益をあきらめれば調達価格が上昇する可能性がある。資源エネルギー庁の幹部は、「代替LNGを市場で調達すると数兆円の追加負担が発生する」と説明する。

ロシアは新会社への出資条件など詳細を発表しておらず、日本政府はロシアからの情報を待って商社と本格的な調整に入る。資源エネルギー庁の同幹部は「新会社に関する詳細は問い合わせ中」と説明。G7は4月の首脳会談で対ロ制裁の一環としてエネルギーを含むロシア経済の主要部門への新規投資禁止を決めているが、「既存権益への投資という理解だ」と話す。

27.5%の権益を保有する英シェルは2月に撤退を発表したが、まだ売却先は決まっていない。

日本政府はロシア産LNG輸入の行方が不透明になる中、電力、ガス事業者間で余剰在庫を融通するなどの代替措置も進めている。また、オーストラリアを今週訪問した萩生田光一経産相が米豪のエネルギー相と個別に会談し、LNGと増産と安定供給を依頼した。萩生田氏はその後の会見で、「日本の立場への理解が示された。十分理解いただいたと思う」と述べた。

(竹本能文、清水律子、浦中美穂、杉山健太郎 編集:山口貴也、久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使と会談 防空強化など「実質」

ワールド

トランプ氏、フィリピンなど7カ国に関税率を通知 最

ビジネス

ビットコイン最高値、11.2万ドル目前

ワールド

トランプ氏、アフリカ5カ国首脳と会談 「援助から貿
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 5
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 6
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    昼寝中のはずが...モニターが映し出した赤ちゃんの「…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中