ニュース速報

ワールド

香港の民主派「立場新聞」発刊停止、7人逮捕 ドイツ・国連が非難

2021年12月30日(木)08時48分

 12月29日、警察の家宅捜索を受けた香港の民主派ネットメディア、立場新聞(スタンド・ニュース)は、業務を停止すると発表した。捜索されたビル前で警備する警官、29日撮影。(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

[香港 29日 ロイター] - 警察の強制捜査を受けた香港の民主派ネットメディア、立場新聞(スタンド・ニュース)は29日、業務を停止すると発表した。民主活動家、黎智英(ジミー・ライ)氏の「蘋果日報(アップル・デイリー)」も今年廃刊となっており、メディアへの締め付けが強まっている。

警察は扇動的出版を計画したとしてスタンド・ニュースの事務所および編集担当幹部の自宅を家宅捜索し、7人を逮捕した。

ドイツ政府と国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、香港警察の行為を非難する声明を出した。

スタンド・ニュースはフェイスブックに「状況を踏まえ業務を停止する。パトリック・ラム編集長代行は辞任し、全従業員が解雇された」と述べた。

警察の国家安全保障部門トップ、スティーブ・リー氏は記者団に、スタンド・ニュースが当局への嫌悪感情をあおるニュースや論説を配信したと指摘。6100万香港ドル(782万ドル)相当の資産のほか、コンピューターや携帯電話、報道資料を押収したと明らかにした。

「記者を標的にしているのでない。国家安全保障上の違反者を標的にしている」と述べ、さらなる逮捕の可能性も排除しなかった。

逮捕されたのは34歳から73歳の男性3人と女性4人。警察は逮捕者の名前を公表していないが、メディアは、スタンド・ニュースの鍾律師元編集長、パトリック・ラム編集長代行のほか、元民主派議員の呉靄儀(マーガレット・ング)氏や歌手デニス・ホーさんら元役員4人が逮捕されたと伝えている。拘留中の鍾元編集長の妻も再逮捕されたと報じられた。

ロイターは、逮捕された人やその弁護士には取材できていない。

香港政府の李家超(ジョン・リー)政務官は、警察の対応に支持を表明し、ジャーナリズムを利用して国家安全維持法(国安法)に対抗しようとする者は報道の自由を損ねる有害分子だと指摘した。

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報時報は11月、政府系シンクタンク全国港澳研究会幹部の発言として、反政府的メディアが生き残る余地は狭まっているとして「スタンド・ニュースは終わりを迎える」と伝えていた。

ドイツ外務省報道官は「特に香港国家安全維持法(国安法)の施行以降、香港における多元主義や言論の自由、報道の自由が確実に後退していることを示す出来事だ」として逮捕を非難した。

OHCHRはロイターへの声明で「香港の市民社会が自由に意見を述べ、表現する手段が極めて急速に封じられている」と懸念を示し、「香港は市民的・政治的権利に関する国際規約の適用を受け、情報、言論、集会の自由に対する権利を尊重するとともに適正手続きを保障する法的義務がある」と述べた。

*ドイツと国連の反応を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中