ニュース速報

ワールド

ワクチン特許権放棄、EUは効果に懐疑的 具体案議論の用意も

2021年05月10日(月)09時37分

5月8日、欧州連合(EU)のミシェル大統領(写真)は、新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄について、パンデミック(世界的大流行)との闘いに役立つかEUは懐疑的だとした上で、具体的な提案を議論する用意があるとの立場を示した。ポルトガルのポルトで代表撮影(2021年 ロイター)

[ポルト(ポルトガル) 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)のミシェル大統領は8日、新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄について、パンデミック(世界的大流行)との闘いに役立つかEUは懐疑的だとした上で、具体的な提案を議論する用意があるとの立場を示した。

当地で開かれたEU首脳会議の2日目の会合前に記者団に語った。

ミシェル氏は、パンデミックに今すぐに対処するためには、ワクチンを増産し、米英などワクチンを生産しながら他国に出荷していない国の輸出制限を解除する必要があると述べた。

新型コロナワクチンの特許権放棄は、インドや南アフリカが昨年、生産能力の増強と世界各国への供給確保に向けた方法として提案。バイデン米大統領が5日、世界貿易機関(WTO)で提案された一時放棄を支持すると表明し、議論が活発になっている。

ミシェル氏は「EUは知的財産権が短期的に特効薬になるとは考えていないが、具体的な提案が示され次第、議論を行う用意がある」と述べた。

当局者によると、7日の首脳会議では、米ファイザーと共にワクチン特許権を持つビオンテックが本拠を置くドイツが、放棄案に強く反発した。

ポルトガル、エストニア、ベルギー、アイルランドも懐疑的な見方を示したが、ギリシャは提案を支持し、イタリアも期間と地域を限定した措置を支持する立場を示した。

EU当局者は、加盟国への分配と同数の約2億回分のワクチンを域外90カ国に輸出したとしている。

フランスのマクロン大統領は、8日の会議前に記者団に対し「エイズウイルス(HIV)薬の知財権が問題になった際に講じられたのと同じ対応について、すぐに議論を始める必要がある。放棄が可能であるべきだが、限定的な形で行う必要がある」と述べた。

また、ワクチン技術を開発した企業が、金銭的に不利な立場に置かれないようにする必要があると強調した。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マクロスコープ:高市氏が予算案で講じた「会計操作」

ワールド

中国、改正対外貿易法承認 貿易戦争への対抗能力強化

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア停戦を評価 相互信頼再構
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中