ニュース速報

ワールド

焦点:制圧へいら立つトランプ大統領、連邦軍動員は法的に可能か

2020年06月04日(木)07時29分

 6月1日、トランプ米大統領は暴動制圧のために連邦軍派遣も辞さない方針を表明。連邦軍を動員するためには、「反乱法」と呼ばれる一連の法令を発動させる必要がある。写真はジョージア州アトランタで出動した州兵。6月1日撮影(2020年 ロイター/Dustin Chambers)

[1日 ロイター] - 黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に拘束されて死亡した事件を巡り、ミネソタ州ミネアポリスで発生した抗議デモは瞬く間に全米へと広がった。

トランプ米大統領は市や州が必要な措置を取るのを拒む場合は、暴動を早期制圧するため「私が連邦軍を派遣する」と表明したが、果たしてそれは可能なのか。

トランプ氏が連邦軍を動員するためには、「反乱法」と呼ばれる一連の法令を発動させる必要がある。

◎反乱法とは何か

合衆国憲法では、各州内の秩序を維持する権限は通常、州知事にある。この原則は「民警団法」と呼ばれる法律に反映されている。同法は一般に、連邦軍が国内法の執行に関与するのを禁じている。

1800年代初頭に制定された反乱法は、この原則の例外を定めており、後に民警団法に編み込まれた。

反乱法は、米国の法律の正常な執行を阻む「内乱」を鎮圧するためには、大統領が連邦軍を派遣することを認めている。

◎トランプ氏は知事の同意なしに軍を派遣できるか

できる。テキサス大の国家安全保障法教授、ロバート・チェスニー氏によると、反乱法は大統領が州知事もしくは州議会の承認を得なければならない状況を定める一方で、必要がない事例も提示している。

デイトン大のサデウス・ホフマイスター法学教授によると、歴史上、反乱法が発動された際には、大統領と知事が派兵の必要性について合意しているのが普通だ。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領は2005年、ハリケーン・カトリーナに襲われたルイジアナ州の非常事態に際し、反乱法を発動して現役兵士を派遣すべきかどうかの判断で、当時の州知事の反対もあり発動しないことを決めた。

◎反乱法発動の前例はあるか

ある。米国の歴史を通じ、反乱法は数十回発動されてきた。しかし、米議会調査局によると、1960年代の公民権運動以来、発動は「極めてまれ」になった。

最後に発動したのはロサンゼルス暴動の92年。黒人のロドニー・キングさんを殴打した市警の警官4人が不起訴処分となったことを機に、激しい暴動が発生して死者が出る事態になった。

◎トランプ氏の反乱法発動、裁判所は無効にできるか

ホフマイスター教授は、今回の暴動には各州知事らが州の刑事司法制度を通じて対処ができるため、反乱法の発動は正当化できないと考えている。「反乱法は悲惨な状況下だけで適用されるべきもので、目下の状況では必要ない」という。

しかし、チェスニー教授は、トランプ氏の同法発動に法的な異議申し立てを行ったとしても、成功する可能性は「非常に低い」とみる。過去の判例では、裁判所は連邦軍に関する大統領の宣言を事後的に批判することには非常に消極的だったという。

チェスニー氏は「この法律は、想定される実用上の目的からみて、軍動員の宣言を大統領に一任するものであり、司法の審理で挑戦できる性質のものではない」と説明。「ひどい状況かもしれないが、それが現実だ」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 10
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中