ニュース速報

ワールド

アングル:消えた冷凍ポテト、活用されない米国の余剰ジャガイモ

2020年05月02日(土)09時48分

 4月24日、米首都・ワシントンに住むレクシー・メイユスキーさん(25)はここしばらく、近所のスーパーマーケットで冷凍フライドポテトが見当たらず困っている。23日、バージニア州フォールズ・チャーチのスーパーで撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

Lisa Baertlein

[24日 ロイター] - 米首都・ワシントンに住むレクシー・メイユスキーさん(25)はここしばらく、近所のスーパーマーケットで冷凍フライドポテトが見当たらず困っている。新型コロナウイルスの感染拡大による外出制限で、買いだめが起こった影響だ。

その頃、ワシントン州で農業を営むマイク・ピンクさんは3万トンものジャガイモを前に、地中に埋め戻してしまうべきかと頭を抱えていた。本来ならマクドナルドやウェンディーズなどのファストフード・チェーン用にフライドポテトに加工され、数百万ドルの収入をもたらすはずの作物だ。

米国の食品サプライチェーンは、小売店向けと飲食店向けに分かれて特化が進み、融通の利かない構造になっている。新型コロナ危機で需要が急変した今、店頭では品切れ、農家では作物の廃棄というちぐはぐな光景が生まれたのはこのためだ。

ニールセンによると、4月4日までの4週間に生鮮食品店での冷凍フライドポテトの売上高は78.6%も急増し、多くのスーパーで品切れになった。

建設現場の監督をしているメイユスキーさんの自宅では、フライドポテトのストックが底を突き始めている。だが、自宅近くのスーパー2軒では「フライドポテトが1袋も見当たらない」。

ファストフード店での食事や学校のカフェテリアでの昼食に慣れた米国民にとって、冷凍フライドポテトは家にあると安心するし、実際手軽で、長く保存もできるため、外出制限中には格好の日常食だ。

飲食店向けのパッケージはかさが巨大なことが、小売店向けに転用する最大の障害となっている。しかも、業務用は小売り用商品で食品医薬品局(FDA)が義務付ける材料や栄養成分の表示がなく、レジで必要なバーコードも付いていない。

FDAはラベルの規制を一時的に緩和するとしているが、それでも飲食店向けの卸売業者が仕様を小売り用に切り替えるには、大きな壁が残る。梱包やラベリングの設備は高価で、プラスチック製のパッケージも供給が不足しているのだ。

<冷凍庫が満杯>

スーパー用冷凍フライドポテト大手、クラフト・ハインツ傘下のオレアイダは、供給拡大を急いでいる。クラフトの広報担当者は「オレアイダの工場は需要に追いつくため、フル稼働している」と述べた。

一方で、ファストフード店向けに冷凍フライドポテトを納入するマケイン・フーズやシンプロットといった業者は、農家へのジャガイモの注文をキャンセルしている。

農家や専門家によると、こうした業者の冷凍庫はフライドポテトやハッシュドポテトで満杯で、倉庫の棚はジャガイモでぎゅうぎゅう詰めだ。

米国のレストランは40%が休業中で、学校も休校、ホテルや職場も閉まっているとあって、業者の需要は減少した。ファストフード店はドライブスルー店舗しか営業していない。

農家のピンクさんは、ファストフード店向けの卸売業者から1000エーカー分のジャガイモの注文をキャンセルされた。これらを育てるのに既に250万ドル(約2億6900万円)を投資済みだが、誰かに販売する準備を整えるには、あと150万ドル(約1億6140万円)かかる。育ったジャガイモは砕いて地中に埋め戻さざるを得ないかもしれない。

「投資を続けるべきか、投資を止めて損失を最低限に抑えるべきか。ひどいもんだ」

全米ジャガイモ協会によると、現在7億5000万ドル(約807億円)ないし13億ドル(約1398億8000万円)相当のジャガイモと加工品がサプライチェーンで目詰まりを起こしている。

ラボバンクの食品アナリスト、JP・フロッサード氏は「こんなことが起こるとは、だれも想像できなかった」と語った。

コンサルタントや小売業者によると、トイレットペーパー、清掃用品、食肉などは、飲食店向けの商品が小売業者に流れるようになったが、他の多くの商品はまだだ。

米国では大半の飲食店事業者がスーパーマーケットと接点を持たず、そのことが問題を深刻化させている。国際飲食業物流業協会(IFDA)のマーク・アレン代表は、供給先を変えるのは「非常に骨の折れる仕事だ」と指摘。需要の先行きが不透明なため「投資を正当化しにくい」と話した。

(Lisa Baertlein記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB現行策、景気巡るリスクに適切に対応=セントル

ワールド

独首相訪中、関係修復・貿易赤字是正目指す エアバス

ワールド

米、加の貿易巡る提案に前向き 数週間以内に会合=U

ワールド

気候関連の運用連合「NZAM」が再始動 規定緩和も
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された「恐怖の瞬間」映像が話題に
  • 3
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違憲とした「単純な理由」
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 6
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「バカにされてる」五輪・選手村で提供の「アメリカ…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中