ニュース速報

ワールド

アングル:緊急事態宣言で日本に5兆円の経済損失、巨額対策は十分か

2020年04月07日(火)19時47分

安倍晋三首相が7日に発令した緊急事態宣言は、すでに悪化している経済をさらに5兆円程度下押ししそうだ。 写真は3月7日、東京銀座で撮影(2020年 ロイター/Stoyan Nenov)

中川泉

[東京 7日 ロイター] - 安倍晋三首相が7日に発令した緊急事態宣言は、すでに悪化している経済をさらに5兆円程度下押ししそうだ。同じ日に閣議決定された緊急経済対策は首相の決断で財政支出40兆円程度と過去に例を見ない大型対策となったが、昨年秋以降の景気悪化に続き、4─6月期のGDPは2桁のマイナスも予想され、経済の落ち込みをどこまで下支えできるか不透明だ。

<GDP喪失分を取り戻せるか>

緊急事態宣言の対象は東京都など7都府県。その経済規模は国内総生産(GDP)のおよそ半分を占める。

欧州でのロックダウン(都市封鎖)のように経済活動を強制的に停止するわけではないため、強烈な経済萎縮には至らないものの、レジャーやサービスを中心に個人消費が一段と落ち込むのは避けられない。企業も設備投資の先送りか、停止を余儀なくされることは必至だ。

ニッセイ基礎研究所矢島康次チーフエコノミストは「1カ月間の実施を想定すれば、GDPは約5.7兆円、年間1.04%程度減少する計算となる」とみている。

大和証券チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏も、同様に約5兆円程度のGDP押し下げを見込み、4-6月期の個人消費は前期比2─3%程度の落ち込みとなると予想している。

すでに昨年の消費増税により10─12月期に8兆円の需要不足が発生しており、今年1─3月以降はコロナウイルスによる世界経済の減速や国内自粛による需要の蒸発で、需要不足はそれ以上に拡大するとみられている。

JPモルガン証券チーフエコノミストの鵜飼博史氏は4─6月に年率17%のGDP減少を予測している。

こうした状況で経済を元の軌道に戻すには、それに匹敵する対策で穴埋めする必要がある。今回の経済対策規模はかつてない規模で、数字上は穴埋めも可能なように見える。

農林中央金庫の南武志・主席研究員「規模を見れば、諸外国に引けを取らない規模となった」とするが、「感染拡大はまだ序の口だとすれば楽観視すべきでない」と指摘する。

<下期回復シナリオ不透明に>

感染終息時期が見えないどころか、これから爆発的感染が始まる可能性もある中、日本経済は年後半の持ち直しすら危うくなっている

リーマンショック時を振り返れば、回復が容易ではないことが思い出される。当時の対策は国費15.4兆円程度、事業費56.8兆円程度。内閣府が当時試算した結果は09年度のGDPを2%程度押し上げ、雇用を40─50万人分創出するというものだった。

しかしGDPは08年4─6月期から4四半期連続でマイナス成長、経済対策の効果もあり、ようやく09年4-6月期からプラスに転じた。

今回の景気悪化の深さは、すでに発表されているマインド面からみればリーマンショック時を上回る面もある。3月ロイター短観の非製造業の落ち込み幅は過去最大となっている。

このため、今回はリーマンショック時の2倍程度にのぼる財政支出規模でも、それで十分という声は聞こえてこない。

JPモルガンの鵜飼氏は、当面企業や家計の所得が下押しされ、業種や企業によっては、資金繰りがさらに厳しくなるとみる。新たな経済対策も、経済の大きなピクチャーを変えるまでのインパクトは持たず、「下期の回復も緩やかなものに止まり、新型ウィルスが下期には封じ込められていると想定しても、元々想定していた生産水準には戻れない」と指摘する。

(編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、5000件増の21万件 予想と

ビジネス

エネルギー高のインフレリスク、ウクライナ侵攻時より

ビジネス

OECD、26年の英成長率予想を大幅下方修正 イン

ビジネス

再送-独ポルシェSE、通期決算は9%減益 防衛分野
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 4
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 7
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 8
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 9
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 10
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中