ニュース速報

ワールド

WTOの紛争処理機能が停止、米国の反対で委員補充できず

2019年12月11日(水)08時52分

 世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きが10日、委員の欠員によって機能不全に陥った。ジュネーブのWTO本部で9日撮影(2019年 ロイター/DENIS BALIBOUSE)

[ブリュッセル/東京 10日 ロイター] - 世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きが10日、委員の欠員によって機能不全に陥った。各国の貿易紛争を解決する役割を担う上級委員会(最高裁に相当)の委員2人がこの日に任期切れを迎えたが、米国が補充に反対しており、審議ができなくなったため。

上級委の定員は本来7人だが、米国が過去約2年にわたり委員の新たな選任を拒否し続けた結果、委員の数は審理に必要な最低人数となる3人にまで減少。11日以降は1人になり、新規の紛争案件は処理できなくなる。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視している。

今後は、トランプ米大統領が導入した鉄鋼関税に関する米中の紛争など、主要な貿易紛争の審議がストップする。

トランプ政権で通商代表部の法務担当を務めたスティーブン・ボーン氏は、今後は多くの貿易紛争が各国交渉官によって解決されるだろうと指摘。

一方、欧州連合(EU)のWTO大使は9日、上級委の機能不全はルールではなく力によって経済関係が構築されるリスクをもたらすと懸念を示した。

WTOのアゼベド事務局長は、上級委問題の「恒久的解決」策を見いだすための努力を即時開始すると明言した上で、加盟国に対し世界経済を阻害するような一方的対応を控えるよう要請した。個別の国の名指しは避けた。

また来年6月にカザフスタンで開催予定の第12回WTO閣僚会議(MC12)に向け、漁業補助金などの問題で結論が得られると期待していると述べた。

梶山弘志経産相は11日、談話を発表し、上級委で審理に必要な定員を下回るという「WTOルールが想定していなかった事態」により「紛争案件が解決されない事態が生じ得る」と懸念を示した。その上で「上級委の機能の早期回復に向けて、WTO加盟国全体で早急に取り組むことが不可欠。日本はこれまでも提案を出すなど、積極的に議論を行ってきたところであり、引き続き貢献していく」と述べた。

*内容をさらに追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独失業率、3月は6.3%で横ばい 失業者数も変わら

ワールド

中国人民銀、適度に緩和的な金融政策維持へ 外部ショ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、3月は2.5% 石油ショックで

ビジネス

ECB、期待インフレ率の新分析手法を開発 
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 5
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中