ニュース速報

ワールド

北朝鮮、「重要な」実験成功 トランプ氏「すべて失う」と警告

2019年12月09日(月)08時07分

北朝鮮の朝鮮中央通信は8日、東倉里の西海衛星発射場で「非常に重要な」実験が行われたと伝えた。写真は2016年に朝鮮中央通信が提供した西海での新型エンジン実験の写真。(2019年 ロイター)

[ワシントン/ソウル 8日 ロイター] - 北朝鮮は8日、東倉里の西海衛星発射場で「非常に重要な」実験に成功したと発表した。これに対し、トランプ米大統領は、敵対的な行為を再開すれば金正恩朝鮮労働党委員長は「すべて」を失う恐れがあると警告し、非核化の必要性を強調した。

トランプ氏はツイッターに「金委員長は、敵対的な行動に出るにはあまりにも賢明だ。そうした行動をとれば、あまりに多くのものを失う。実際、すべてを失うだろう」と投稿。昨年開いた金委員長との初会談を引き合いに出し、「金委員長はシンガポールで力強い非核化合意に署名した」と指摘した。

その上で「米国大統領との特別な関係を台無しにしたり、11月の米大統領選の妨げになったりすることはしたくないだろう」とけん制した。さらに「金委員長の指導の下、北朝鮮には多大な潜在的経済力がある。しかし、約束通り非核化しなければならない」とも強調した。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、「大きな意義のある実験の成功」を報じたが、詳細は明らかにしていない。米当局者は以前に、北朝鮮が西海衛星発射場の閉鎖を約束したと明らかにしている。

専門家は、北朝鮮が実施したのはミサイル発射ではなく、ロケットエンジンの静止試験の可能性が高いとみている。

米国科学者連盟の非常勤上級研究員アンキット・パンダ氏はツイッターで「地上でのエンジン試験の公算が大きい。発射試験ではない」との見方を示した。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の核問題専門家バイピン・ナラン氏は「新たな固体燃料や液体燃料のエンジン静止試験だったとすれば、外交の扉が急速に閉ざされる新たなシグナルだ」とし、「来年に起こり得ることを予兆させる非常に確かなシグナルの可能性もある」と述べた。

<再び高まる緊張>

北朝鮮は非核化を巡る対米交渉の期限を年末に設定し、米国が一方的な非核化要求を撤回しなければ、「新たな道」を選ぶ可能性があると警告している。

北朝鮮の金星国連大使は7日、非核化は米国との交渉のテーブルから外れたとし、米国との長期にわたる協議は必要ないとの認識を示した。[nL4N28I04S]

KCNAは8日の報道で「最近の重要な実験の結果は、近い将来に北朝鮮の戦略的位置付けを再び変える上で重要な効果をもたらす」とした。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は8日、CBSのインタビューで、北朝鮮が核実験の再開を準備している可能性があるかとの質問に対し、「そうだとすれば過ちだ」と指摘。「(核実験を再開すれば)同国にとって良い結果にはならないだろう。北朝鮮が約束と違う道を選択すれば、米国には多くの手段がある」と述べた。

北朝鮮は2017年9月を最後に核実験を行っていない。

KCNAは今月4日、朝鮮労働党が今月下旬に中央委員会総会を開催すると報じるとともに、金委員長が同国の聖地とされる白頭山を再び白馬で訪れた写真を公開した。こうした動きは重要な発表の前に見られることが多い。[nL4N28E1IZ]

「新たな道」が何を指すのか北朝鮮は明確にしていないが、専門家は可能性の1つとして宇宙衛星の打ち上げを挙げていた。衛星打ち上げにより、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)のようにあからさまな軍事的挑発に出ることなく、ロケットの能力を試すとともに誇示することができる。

元韓国海軍士官で慶南大学教授のKim Dong-yub氏は、北朝鮮が固体ロケットエンジンの試験を行った可能性があると指摘した。固体エンジンを使用すれば、ICBMを隠しておき、発射時に短時間で移動させることが可能になる。同教授は「北朝鮮はすでに『新しい道』に入っている」と述べた。

<可逆的措置>

トランプ米大統領は昨年6月に開いた金委員長との初会談後、北朝鮮がミサイル施設1カ所の廃棄を約束したと記者団に述べた。その後、米当局者の話から、廃棄を約束したのは西海衛星発射場であることが分かった。

首脳会談後、専門家らは衛星写真を基に、同発射場で一部の主要設備が廃棄されているとしていたが、物別れに終わった2回目の米朝首脳会談後、北朝鮮が同発射場の復旧を進めていることを示す映像が明らかになっていた。

米CNNは、5日に撮影された衛星写真で同発射場に新たな動きが見られ、大型の輸送コンテナも写っていると報道。専門家は近く実験が行われるとの見方を示していた。

MITのナラン氏は「これは『非核化措置』として廃棄されたはずの発射場だ」とし、「今回の実験は『再核化(renuclearizing)』の最初のステップだ。可逆的な措置が実際に元に戻されつつある」と述べた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中