ニュース速報

ワールド

アングル:英首相が12月総選挙を提案、実現へのシナリオは

2019年10月26日(土)08時23分

10月24日、ジョンソン英首相(写真)は英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る議会のこう着状態を打破するため、総選挙の前倒しを提案した。ロンドンの首相官邸前で23日撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)

[ロンドン 24日 ロイター] - ジョンソン英首相は24日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る議会のこう着状態を打破するため、総選挙の前倒しを提案した。

ジョンソン氏は、28日に議会で12月12日の選挙実施を求める動議を出すと表明。同氏が総選挙前倒しを提案するのは3回目となる。過去2回の提案は議会で否決された。まずは合意なしのブレグジットを避ける道を確保したいとの反対論が優勢だったためだ。

英国では総選挙は5年ごとに行う規定だが、条件次第では前倒しも認められている。予定通りなら選挙は2022年。具体的にどのような場合に前倒しができるのか。

<3分の2の賛成>

議会下院定数(650人)の3分の2に当たる434人が賛成すれば、総選挙の前倒しが可能だ。政府も来週、この方法を採ろうとしている。

ジョンソン氏が9月に行った2回の提案には、十分な支持が集まらなかった。9月4日は賛成が298人(反対56人)、その5日後は賛成293人(反対46人)だった。

<シンプルな法案>

ジョンソン氏には、3分の2の確保という制約を擦り抜ける道もある。議会がどこか特定の日に選挙を行うと布告するというシンプルな法案を提出すれば、下院の単純過半数の賛成で可決できる。

ただこの手続きには問題がある。例えば野党側は恐らく選挙権年齢の引き下げを通じて法案の修正を目指す意向を示唆している。

<内閣不信任>

下院でジョンソン内閣不信任案が提出され、単純過半数の賛成で可決されれば、選挙への扉が開く。不信任案成立後、14日以内に誰かが過半数の信任を得て新政権を樹立できなかった場合、選挙に突入する。

もっともジョンソン氏自身が総選挙を訴えている以上、不信任案成立による選挙という流れは予想されない。

<投票日を誰が決めるか>

ジョンソン氏だ。選挙が決まってから投票までに最低限の日数を設けることは法律で義務付けられているが、最長でいつまでに投票日を定めるかの規定は存在しない。

<具体的な規定は>

選挙の正式決定から投票日までは、土日を除いて最低25日の期間が必要になる。投票日は伝統的に木曜日とされてきた。

<前倒し選挙へのハードルは>

ジョンソン氏は、前倒し選挙に向けて超党派の支持を得なければならない。だが最大野党の労働党はこれまで、合意なきブレグジットのリスクがあるうちは選挙を支持しないという方針だ。たとえ労働党のコービン党首が選挙に賛成しても、議席を失うことを恐れる一部の議員が造反して前倒し選挙の動議に反対する恐れがある。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のチャットボット、反ユダヤ主義的との苦情受

ワールド

ロイターネクスト:シンガポール、中国・米国・欧州と

ビジネス

日経平均は続伸、円安が支え 指数の方向感は乏しい

ビジネス

イオンが決算発表を31日に延期、イオンFSのベトナ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中